[フェイス21世紀]:横山 奈美〈画家〉

2016年09月19日 13:05 カテゴリ:エッセイ

 

ちっぽけな運命に 光を当て

 

 

フライドチキンの骨、使用済みのテレフォンカード、食べ終わったお菓子の袋。「いずれ捨てられるもの」をモチーフに描いた絵画を中心とし、今年7月、新宿・ケンジタキギャラリーで個展を開いた。

 

トイレットペーパーの芯を巨大な生命体に見立てた作品で、今年の岡本太郎現代芸術賞展に入選。その展示が評価を集め、3月には第8回絹谷幸二賞奨励賞を受賞した。

 

幼い頃から「なることができないもの」に強く憧れた。中高生の頃、なりたかったのはアメリカ人歌手のブリトニー・スピアーズ。「日本人の私はたとえ金髪にしても似合わず、破天荒な振る舞いも真似できない。正反対の存在でした」。そのまっすぐな瞳で振り返る。

 

大学で現代アートの世界に触れ、「今の自分がつくるべき作品は何か」と模索の日々が続いた。そんなある晩、野菜炒めをつくっていると偶然1本のもやしがコンロに落ちた。「その時、それを捨てるも元に戻すも自分にゆだねられているような気がして。もやしが急に人のように見えてきました」。行く末を自分で決めることができないもやしの宿命と、外国人にはなれない自身の宿命。それらを重ね、生活に溢れるちっぽけな存在の肖像画を描きはじめた。その画面には少しの悲しみやおかしみが滲む。

 

 

個展で発表した最新作で見せたかったのは、ネオン管の光と、その後ろの配電線の部分。「光が希望や憧れだとしたら、後ろは見られたくないボロ。その両方を均一に描きたい」。これまでは捨てられゆくものにスポットライトを当てていたが、自ら光を放つモチーフが新たに加わった。

 

宿命は前に進む力となる。「岸田劉生たちも西洋から輸入された絵画に憧れ、試行錯誤したのでは」。そんな彼らの静物画の形式を引用しつつ、現代の生活にありふれた「ちっぽけな運命」をそっと照らす。

 

(取材・撮影:岩本知弓)

 

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横山 奈美 (Nami Yokoyama)

 

1986年岐阜県生まれ。愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画版画領域修了。現在、茨城県取手市在住。「VOCA展2015」出品。今年、第19回岡本太郎現代芸術賞展の入選を経て、第8回絹谷幸二賞奨励賞を受賞。愛知県立芸術大学創立50周年記念事業油画専攻企画展「INTERWOVEN-編み込まれた世代」(9月14日~25日、名古屋市民ギャラリー矢田)に出品中。

 

 


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