園山晴巳展
Harumi SONOYAMA
―予兆・痕跡―
版画家・園山晴巳(1950年福岡県北九州市生まれ、日本版画協会理事)の南天子画廊では2004年以来となる個展が開催される。
国内では毎年1回の版画展をはじめ、グループ展に出品。また海外においては、文化庁在外派遣芸術家研修員として70年代半ばに渡仏、渡米して以降、数々の国際展に挑戦してきた。特に80年代のリュブリアナ国際版画ビエンナーレ(現スロベニア)では第16回展でリュブリアナ賞を、第18回展ではLamalo賞を受賞。さらに2000年以降は、中国や台湾などでも発表し、世界を舞台に版画家としての立場を磨き上げてきた。
リトグラフの技法により描画される嘗てのモチーフは、自らの制作に用いる油性のオイル缶、ロープやテープなどを組み合わせた構成と色彩により、強い画面を模索、継続してきた姿がある。
その画面に大きな転機が訪れることになったのが、2001年。世界を震撼させた、あの「9.11」の衝撃により一時制作が止まることとなった。「煙にまかれたビルから人のようなものが落ちる中、2機目の旅客機が突入していく現実の映像を見てから、―世界は変わってしまった―。制作中の作品は、その日以来作ることができず、幼い頃、電車にはねられ、死にかけた時の記憶と同じように頭から離れない」と本展カタログで当時を回想している。
制作中断の後に、生まれた「Signe(サイン)」シリーズ。作品制作の意味を問い続けるなかで見た、「夜、電車の窓からぼんやりと外を眺めていると、景 色の中に50段ばかりの階段が浮かび上がるように見えた。登り口の幾段かは街灯に照らされ強く光り、その先は暗闇に沈んでいる。―きっとそこにたたずめば 楽に歩めるだろう―」という光景が新たな制作の始まりとなり、〝予兆や痕跡〟という言葉とともに日常にある「シーツ」が作品世界のなかに展開されることと なった。
本展ではモチーフである「シーツ」が、物質としての意味あいから距離をおき、より多くの光りを纏い、柔らかで重層的な印象が深まっている。「白いシーツを描いていますが、光りの反射や透過など光そのものを描きたい、という思いをもっています。一見するとモノクロームに見える世界ですが、数種の色を掛け合わせているんです。その質感を感じてもらえれば」と出品作への思いを語った。
【会期】 2013年6月3日(月)~29日(土)
【会場】 南天子画廊(東京都中央区京橋3-6-5)☎03-3563-3511
【休廊】 日曜
【開廊時間】 10:30~18:30
【料金】 無料
【オープニングパーティー】
6月3日(月) 17:00~19:00
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