【上野】 世紀の日本画 日本美術院再興100年

2014年01月23日 19:18 カテゴリ:日本美術院

 

 

重要文化財 狩野芳崖「非母観音」 明治21(1888)年 東京藝術大学蔵 〈後期〉

重要文化財 狩野芳崖「悲母観音」 明治21(1888)年 東京藝術大学蔵 〈後期〉

伝統と革新 院が継承した重要な側面

古田亮(東京藝術大学大学美術館 准教授)

 

 

この展覧会のタイトル「世紀の日本画」は、日本美術院が再興から100年を迎える今年、その歩みを紹介する企画であることから名付けられた。そして、まさに「世紀の」と形容するにふさわしい名品ばかりを集めた豪華な出品作品からは、20世紀の日本画の歴史が浮かびあがってくるのである。

 

第一章では、明治31(1898)年に創立以来、今日に至るまでの日本美術院の歴史を、主要作家たちの代表作によってダイジェストでたどる。前史として狩野芳崖、橋本雅邦ら近代日本画の出発点に位置づけられる画家たちから、前期院展の、横山大観、菱田春草、下村観山ら、そして再興以降の安田靫彦、小林古径、前田青邨、奥村土牛、小倉遊亀など、巨匠たちの競演となる。

 

第二章は、再興当時にスポットを当てている。大正3(1914)年9月、前年に歿した天心の一周忌を期して、大観、観山らが再び院を興した。再興時は、日本画だけでなく洋画と彫刻とを合わせた総合芸術研究団体であったことも院には重要な歴史であり、今回は小杉未醒、平櫛田中らの洋画、彫刻作品を厳選して展示している。

 

小倉遊亀「径」 昭和41(1966)年 東京藝術大学蔵 〈前期〉

小倉遊亀「径」 昭和41(1966)年 東京藝術大学蔵 〈前期〉

続く第三章から第七章までは、歴史、花鳥、風景、人物などのテーマに分けて、再興以来の主要同人の名品に、現在の同人たちの作品もまじえて構成している。この展示構成が意図するところは、ひとつには、院の伝統がテーマの選定において特徴をもっていることを明らかにすることである。岡倉天心以来の研究課題として、歴史、宗教、思想に重きを置いてきたことが第一に挙げられるが、その伝統は、大観や靫彦そして平山郁夫らによって今日まではっきりと受け継がれてきた。花鳥や風景などの自然を対象とする傾向は日本画全般の特徴でもあるが、古径や青邨を挙げるまでもなく、琳派などの古典絵画と近代の写実表現とを融合させていく志向が院展日本画には顕著である。

 

横山大観「無我」 明治30(1897)年 東京国立博物館蔵 Image:TNM Image Archives 〈後期〉

横山大観「無我」 明治30(1897)年 東京国立博物館蔵 Image:TNM Image Archives 〈後期〉

また、伝統のみならず「革新」に対して意識的であることも、院が継承してきた重要な側面である。今回の展覧会でも、随所にその革新性を垣間見ることができる。土牛、遊亀らが20世紀の西洋モダニズム絵画の影響を受けて日本画を変革していったこともその一例だが、第六章「幻想の世界」で取り上げている戦後の抽象傾向やダブルイメージの手法などは、中島清之、岩橋英遠から現役の松尾敏男、下田義寬、さらに若い世代にも見られる院展らしさのひとつと言えるだろう。

 

本展は、近代日本画の歩みと、その表現の多様性を知ることのできる絶好の機会となることだろう。

 

 

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再興第98回 院展

 

 

松尾敏男「樹海」 昭和45年(1970) 東京国立近代美術館蔵

松尾敏男「樹海」 昭和45(1970)年 東京国立近代美術館蔵 〈前期〉

【会期】 〈前期〉2014年1月25日(土)~2月25日(火)、〈後期〉2014年3月1日(土)~4月1日(火)

【会場】 東京都美術館(東京都台東区上野公園8-36)☎03-5777-8600

【休室】 月曜、2月26日~28日、ただし2月24日・3月31日は開室

【開室時間】 9:30~17:30(金曜のみ20:00まで、入室は閉室30分前まで)

【料金】 一般1400円 学生1200円 高校生800円 65歳以上1000円

【関連リンク】 東京都美術館 日本美術院

 

記念講演会 「日本画の過去、現在、未来」

【日時】 2014年2月8日(土) 14:00~15:30

【講師】 古田亮

記念講演会 「日本画との出会い」

【日時】 2014年3月1日(土) 14:00~15:30

【講師】 松尾敏男(画家、日本美術院理事長)、田渕俊夫(画家、日本美術院代表理事)、河合晴生(東京都美術館)

※ともに会場は東京都美術館講堂。聴講無料、要観覧券(半券可)、定員230人。

 

「新美術新聞」2014年2月1日号(第1334号)1面より

 


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