ミスター・ポップ・アート。国内史上最大の回顧展
「伝説」を今日の目で再考する試みも
近藤健一(森美術館キュレーター)
アンディ・ウォーホル(1928–1987)は、消費社会と大衆文化の時代を背景に、ジャンルを超えたマルチクリエイターとして活躍した20世紀を代表する米国美術の巨匠である。キャンベル・スープ缶やブリロ洗剤の箱など日用品を主題にした作品や、マリリン・モンローやエリザベス・テイラーなどスターの肖像画をシルクスクリーンを使い制作した「絵画」は、美術界に大きな衝撃を与えた。
本展は、米国のアンディ・ウォーホル美術館の所蔵品を中心に、ウォーホルの作品を初期から晩年まで包括的に紹介する、日本では史上最大の回顧展である。シンガポールをはじめとするアジア巡回展の最後を飾るもので、森美術館が展示作品の追加や企画の再構成を行い、東京展は独自のものとなる。
上述作品を含め≪エルヴィス≫≪ジャッキー≫≪毛沢東≫といったおなじみの絵画やプリント作品に加え、商業イラストレーターとして活躍した50年代のドローイング、60年代に画家廃業宣言をしてまで制作に没頭した実験映画とヴィデオ、肖像画制作のために撮影されたポラロイド写真や有名人との交流の中で生まれた白黒写真など、約400点の作品を展示する。
さらに、「タイム・カプセル」と称しダンボール箱に収められた、作家所有の書簡、雑誌や写真などのなかから、日本に関する資料を含む約300点を公開する。この中には浮世絵の複製や日本の週刊誌なども含まれる。
本展はめったに公開されることのないモンローの絵画作品や日本初公開の映像作品、74年の東京と神戸での個展開催のために来日したウォーホルを密着取材した未公開写真や、彼がプロデュースしたテレビ番組なども展示し、ウォーホル通にも新しい発見があるものとなる。ビリー・ネームの残した臨場感溢れる写真を基にウォーホルのアトリエを部分的にほぼ原寸大で再現し、3月1日からは70年大阪万博展示後に破棄された幻の大作≪レイン・マシン≫の再制作版も展示するなど、これらの「伝説」を今日の視点で客観的に再考することも試みる。
過去、日本では何回もウォーホル展が開催され、絵画とプリント作品ばかりに焦点が当てられている中、本展はより広い視野で彼の活動を考察しようという試みである。本展タイトル「永遠の15分」は、「将来、誰でも15分は世界的な有名人になれるだろう」というウォーホルの有名な言葉に由来するが、本展が、この20世紀の巨匠が現在に与え未来に続いていくであろう影響を再検証するきっかけとなれば幸いである。
アンディ・ウォーホル展:永遠の15分
【会期】 2月1日(土)~5月6日(火・休)
【会場】 森美術館 (東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階) ☎03-5777-8600
【開館時間】 10:00~22:00(火曜日のみ17:00まで) 入館は閉館30分前まで
【休館】 会期中無休
【料金】 一般1500円 学生(高校・大学生)1000円 子供(4歳〜中学生)500円
【関連リンク】 森美術館
★3月1日(土)からは今展関連企画として『Andy Warhol Café(アンディ・ウォーホル・カフェ)』が六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー内にオープン。
【営業時間】
月・水~日曜日 11:00-23:00(LOフード 22:00、ドリンク 22:30)
火曜日 11:00-17:00(LOフード 16:00、ドリンク 16:30)
※4月29日、5月6日の火曜日は23:00まで
※3月1日(土)はイベント開催のため15:00まで、4/19(土)はイベント開催のため18:00まで
【場所】 東京シティビュー マドラウンジ スパイス(六本木ヒルズ森タワー52階)
【料金】 展覧会チケット、もしくは東京シティビューへの入場料(一般1500円)が必要
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