イメージに何をもとめ、生きる縁としてきたか
長屋光枝 (国立新美術館主任研究員 企画室長)
本展覧会は、近現代美術を中心に展覧会を開催してきた国立新美術館と、34万点にも及ぶ世界各地の資料を擁する国立民族学博物館が共同で企画した展覧会です。
タイトルに冠された「イメージ」とは、実に多義的な言葉です。それは、絵画や彫刻となって私たちの前に現われますが、人間の記憶に生き続けることから分かるように、観念的な存在でもあります。古来ひとは、自らが生み出したイメージに祈りを捧げ、これと戯れ、これを操作することで、この世に生きることとの折り合いをつけてきました。本展覧会は、人間がイメージに何をもとめ、そこから何を得て生きる縁としてきたかを問うものです。
展覧会は、7つのパートに分かれています。世界各地の儀礼で用いられる仮面を集めたプロローグ「視線のありか」から始まり、神や神話などの視覚化を探る第1章「みえないもののイメージ」、色や光、高さを強調したイメージを集めた第2章「イメージの力学」、かたちを生み出すことの根源的な喜びに着目した第3章「イメージとたわむれる」、交通や通信の発達によるイメージの交流を扱う第4章「イメージの翻訳」、そして最後に、美術館という場の機能を見つめなおすエピローグ「見出されたイメージ」が続きます。いずれの展示においても、世界各地のさまざまな地域や時代の造形物が混在しています。そこから普遍的な何かが汲み取れるならば、それは、人類がイメージに対する普遍的な志向を有することの証だと言えます。
本展覧会が美術館と博物館の共同企画であることは、もうひとつのテーマです。展示物に触れることを厳格に禁じる美術館は、「見る」ことに特化した場であり、そこに並んだものたちは神聖な「作品」と位置づけられます。一方、博物館の収蔵品は「資料」と呼ばれ、ときに観客はそれに触ることもできます。美術館が、作品以外の要素を減じて「見る」ことに専心させようとするのに対し、博物館は、趣向を凝らした演出や豊富な文字情報とともに資料を示します。本展覧会は、博物館と美術館という制度が築き上げてきた慣習を相対化することで、イメージに対する私たちのアプローチを見直そうとしているのです。
イメージは、見るひとや、見るときの心理状態、それを取り巻く環境などによって、見え方や現れ方を変えます。展覧会を通じて、イメージの普遍性とともにイメージの潜在的な力も見直していただければ幸いです。
イメージの力 国立民族学博物館コレクションにさぐる
【会期】 2月19日(水)~6月9日(月)
【会場】 国立新美術館 企画展示室2E (東京都港区六本木7-22-2) ☎03-5777-8600(ハローダイヤル)
【休館】 火曜、ただし4月29日(火)および5月6日(火)は開館、5月7日(水)は休館
【開館時間】 10:00~18:00
※金曜日は20:00まで開館
※4月19日(土)は「六本木アートナイト2014」開催にともない22:00まで開館
※入場は閉館の30分前まで
【料金】 一般1000円 大学生500円
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図像全て国立民族学博物館蔵 写真提供:国立民族学博物館
「新美術新聞」2014年2月21日号(第1336号)1面より