2012年の美術館連絡協議会(酒井忠康理事長)の美連協大賞、同奨励賞・カタログ論文賞を決める審査会が先に開かれ、昨年、神奈川県立近代美術館を皮切りに全国4館で開催された「すべての僕が沸騰する 村山知義の宇宙」(京都国立近代美術館、高松市美術館、世田谷美術館に巡回)が大賞に選出された。
同展は、日本における前衛運動の旗手として、美術のみならず文化全般に多大な影響を与えた村山知義(1901-77)のあゆみをたどる初の大規模回顧展。神奈川近美を幹事館に度重なる調査や研究会を重ねて実現させたもので、戦災により失われた絵画作品を複製パネルで展示する工夫を凝らした会場構成や、最新の調査研究の成果を盛り込んだ図録など総合的に高い評価を得た。
奨励賞には一部に熱狂的なファンをもつ渓斎英泉の画業を再検証し、広く一般に紹介した「浮世絵師 渓斎英泉」(千葉市美術館)と、美術、デザイン、建築、写真、演劇、音楽、漫画など時代を証言する多様な作品、資料を通じて若者文化の原点としての70年代を考証した「日本の70年代 1968‐1982」(埼玉県立近代美術館)が選ばれた。カタログ論文賞は「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」の西川美穂子氏、「KATAGAMI Style」の生田ゆき氏、「マックス・エルンスト フィギュア×スケープ」の副田一穂氏、「江戸の風雅―旧きを知り新しきを創った絵師たち」の野田麻美氏ら4名が受賞。優秀カタログ賞は「蕭白ショック!!」展、「大絵金展」、「川村清雄」展、「松本竣介展」の4図録に決定した。
「新美術新聞」2013年3月11日号(第1306号) 3面より