海外流失の懸念 貴重な資料類を収集・保存・展示 - 国立近現代建築資料館が5月上旬開館
名誉館長に安藤忠雄氏が就任
戦後期に活躍した丹下健三、そしていま世界で活躍する安藤忠雄、伊東豊雄、SANAA(妹島和世と西沢立衛)、坂茂ら日本現代の建築家たち。だが著名な近現代建築家の関係資料が劣化・散逸さらに海外流失の恐れもあるという。そうした我が国の貴重な建築関係資料の調査、緊急性のある資料の収集・保存、展示等を行う国立近現代建築資料館が来る5月上旬、東京文京区(湯島地方合同庁舎内)に開館する。名誉館長は建築家・安藤忠雄氏。
国立の建築資料館を求める要望はかねてから関係者の間にはあったといわれる。1986年、日本建築学会創立100周年を機に「建築博物館設立要望書」が大蔵大臣、文部大臣等宛てに提出され、同学会は94年にも「建築博物館調査委員会」(松村貞次郎委員長)によって「建築博物館構想」をまとめた。2000年には「近代建築資料総合調査特別委員会」(鈴木博之委員長)を設置し、近代建築図面等の所在調査を行った経緯もある。
これまで建築関係資料は、建築あるいは建築家についてそれぞれゆかりの地、関係機関などが収集することが多く、京都工芸繊維大学、金沢工業大学、東京藝術大学、大阪芸術大学等が優れたコレクションを有している。
この間、世界に誇れるその貴重な史料である設計図・模型等について海外からは度々譲渡の要請などがあった。特に近年、海外において日本人建築家の目覚ましい活躍が明らかになればなるほど、いわゆるマーケットでもそれらの史料的価値は高騰しつつあり、放っておけばますます海外への流失・散逸の恐れがあったといわれる。こうした事態に対し建築分野に関心をもつ田中真紀子衆議院議員(当時)らが中心となった強い働きかけでこのほど設置に至ったもの。
設置趣旨は「我が国の貴重な建築関係資料の劣化・散逸や海外流失を防ぐため、著名な近現代建築家の建築関係資料(図面・模型等)について、所在状況の調査、関係機関との連携、緊急に保護が必要な資料の収集・保存、展示等を行う」。
設置者は文化庁、同長官官房政策課の一組織。宮内庁三の丸尚蔵館と同様の位置付けだ。名誉館長には、同館設置に強い関心をもって尽力した建築家、安藤忠雄氏が就任。所在地=東京都文京区湯島4―6―15、☎03― 3812 ― 3401。同館延床面積は1162・7㎡、うち展示面積292・2㎡。別館と新館の2棟で別館2階が展示スペース。スタッフは学芸員など7名。
事業概要として①情報収集②資料の収集・保管③展示・教育普及④調査研究等。収集の方針は「国内外で高い評価を得ている建築・建築家の関係資料で芸術的・技術的に高い価値のもので散逸等の恐れが高く国において緊急に保全する必要のあるもの」とする。
「新美術新聞」2013年4月11日号(第1309号)3面より
国立近現代建築資料館
開館記念特別展示 「建築資料にみる東京オリンピック」
【会期】 2013年5月8日(水)~6月14日(金)
【料金】 無料
※ 特別展示の観覧には入館予約が必要。下記の公式ホームページより予約のこと。
【関連リンク】 文化庁 国立近現代建築資料館