【レポート】 シンポ「震災とミュージアム」「こんなデザイン美術館をつくりたい!」

2013年06月10日 16:02 カテゴリ:最新のニュース

 

4月21日・仙台発→東北・未来を熱くシンポする

「震災とミュージアム そのとき私たちは何ができるのか」美術史学会:仙台市博物館

「こんなデザイン美術館をつくりたい!」国立デザイン美術館をつくる会:せんだいメディアテーク

 

 

シンポジウム「こんなデザイン美術館をつくりたい!」会場より

シンポジウム「こんなデザイン美術館をつくりたい!」会場より

突然の大雪に見舞われた4月21日(日)、宮城県仙台市内で2つのシンポジウムが同時に開催された。一つは美術史学会主催の「震災とミュージアム そのとき私たちは何ができるのか」(会場:仙台市博物館)、もう一つは国立デザイン美術館をつくる会による「こんなデザイン美術館をつくりたい!」(せんだいメディアテーク)。日時は偶然に重なったという。震災、ミュージアム&未来。熱く語りあう参加者、集う聴衆の姿が共に印象深かった。

 

 

 

仙台市博物館で開かれた「震災とミュージアム そのとき私たちは何ができるのか」は、美術史学会の主催。同会は、いわば研究学者の集まりだが、全国美術館会議や博物館の学芸員もいる。プログラムでは島尾新・学習院大学教授が主旨を説明。岡田健・東京文化財研究所保存修復科学センター長が「被災文化財レスキュー事業の成果と課題―救援委員会事務局を担当して―」と題して基調報告を行った。平川新氏の「民家からレスキューされた美術品」、村上博哉氏の「救援から支援へ:全国美術館会議の活動」などの報告があった。

 

「震災とミュージアム」(仙台市博物館)岡田健氏の基調報告

「震災とミュージアム」(仙台市博物館)岡田健氏の基調報告

震災から2年余、学会としての具体的な救援活動ではなくとも今後の復興に向けて貴重な総括的報告の場が提示された。同会場では、日本の美術館などの出品もあった特別展「若冲が来てくれました プライスコレクション江戸絵画の美と生命」も開催中だった。オブザーバー参加のプライス夫妻も「美の力はとてつもなく大きい」との熱いメッセージを語った。

 

一方、メディアテークで開かれた「こんなデザイン美術館をつくりたい!」は、昨年11月東京ミッドタウンでの初回を受けた第2回目のパブリック・シンポジウム(東北芸術工科大学共催)。関係者によれば、2回目は東北での開催希望が強くあったという。一般の予約参加者で会場は満員。討議は3つのセッションに分けて行われた。まず第1部でグラフィックデザイナー・佐藤卓、プロダクトデザイナー・深澤直人、インターフェースデザイナー・中村勇吾、アーティスト・関口光太郎、建築家・大西麻貴の各氏ら今が旬のクリエーターたちの独創的なアイデアが次々と披露された。続いて現代美術家・宮島達男氏、建築史家・五十嵐太郎氏が一般から寄せられたアイデアをそれぞれの視点からセレクト、活発な意見交換があった。そしてアートディレクター・浅葉克己、建築家・伊東豊雄、デザイナー・三宅一生、美術史家・国立西洋美術館長 青柳正規の4氏が登壇した第3部では、11人のクリエーターが勢揃いしての大セッションとなった。

 

「こんなデザイン美術館をつくりたい!」(せんだいメディアテーク)右から青柳正規、三宅一生、浅葉克己、伊東豊雄の各氏

「こんなデザイン美術館をつくりたい!」(せんだいメディアテーク)右から青柳正規、三宅一生、浅葉克己、伊東豊雄の各氏

 

どんな美術館を創るべきなのかについて、アーカイヴ、建物、立地また震災を含め様々な観点から議論が交わされた。元々、東北はデザインの核となる「手の仕事」が豊かな地。新たな美術館像への豊かなデザイン構想が創作されそうだ。

 

「新美術新聞」2013年6月1日号(第1313号)3面より

【関連リンク】

美術史学会

国立デザイン美術館をつくる会

 

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