栃木・宇都宮美術館/栃木県立美術館
新会長に建畠晢・埼玉県立近代美術館長を選出
日本の国公立美術館の連携協力を図る全国美術館会議(全美、会長=青柳正規・国立西洋美術館長)の第62回総会が5月30日(木)、31日(金)、栃木県宇都宮市の宇都宮美術館、栃木県立美術館等を会場にして開かれた。全国から会員館156館の館長、学芸関係者ら約280人が参加、事業・決算の報告や予算(案)等の承認、各企画委員会・研究部会、東日本大震災復興対策委員会の活動報告が行われた。理事役員の改選があり、青柳会長は会長を退任、新会長に建畠晢・埼玉県立近代美術館長が選ばれた。事務局はこれまで通り国立西洋美術館。
議事では事業報告、事業計画案、企画委員会・研究部会、東日本大震災復興対策委員会等の報告は何れも満場一致で承認された。新入会員館は、九州国立博物館(三輪嘉六館長)、高浜市やきものの里かわら美術館(井口喜晴館長)、馬の博物館(畑山光伸館長)、ヤマザキマザック美術館(山崎照子館長)、一般財団法人軽井沢ニューアートミュージアム(白石幸栄館長)、山ノ内町志賀高原ロマン美術館(佐々木正明館長)、小杉放菴記念日光美術館(小野昌紀館長)、実践女子学園香雪記念資料館(仲町啓子館長)、文化フォーラム春日井(古屋陽一館長)、アーツ前橋(住友文彦館長)の10館、退会会員館として公益財団法人佐川美術館、貞観園付設茶道美術館、富本憲吉記念館、板橋区立美術館、北網圏北見文化センターの5館が報告、承認された。
検討委員会より国際博物館会議( ICOM:The International Council of Museums)の2019年招致の報告があった。
近藤誠一文化庁長官が今回は総会に出席、冒頭の来賓挨拶に立ち、「日本でまだ文化芸術の力が生かし切れていない分野があります。障がい者の方々への教育です。その現実に美術館の関係者はもっと目を向けて頂きたい。最近、超党派で障がい者の方々に芸術文化の力を伝えるという振興議員連盟ができました。文化庁としても有識者らを組織して支援の活動を検討していく方針です。また子どもに対する芸術教育が肝心です。といってもただ教えて芸術家を育てることではなく音楽や美術でファシリテーターとして子どもの潜在能力をどうフルに引き出すか、に注目が集まっています。ルーヴル美術館でも現場で見せて教えるのではなく子どもたちの才能を引き出してやる、そういうことを始めています。それで来館者がすぐ増えるのではありませんが国民全体の鑑賞レベルが上がり、社会が元気になり、やがて美術館への来訪者が増えるでしょう。美術館の役割が更に大きくなる。7月16日には文化庁主催でファシリテーター・サミットを行います。美術、音楽、演劇、伝統芸能4つの分野で子どもの能力を引き出す事に関心をもつ方々を招いて、ファシリテーションをテーマにディスカッション等も開きます。ご協力を賜りたいと思います」と語り、文化芸術立国を掲げる安倍内閣の一員として全国美術館会議の役割に大きな期待を寄せた。
今期は役員の改選があり、青柳会長が退任し、新会長には理事会で互選の結果、建畠晢・埼玉県立近代美術館長が選任され、副会長に会長指名で山梨俊夫・国立国際美術館長、米田耕司・長崎県美術館長、徳川義崇・徳川美術館長が決まった。また高階秀爾・企画委員会委員長も退任し、後任には雪山行二・富山県立近代美術館長が決まった。
他の新役員は次の通り。佐藤友哉、河野元昭、早川博昭、白石正己、青柳正規、酒井忠康、福原義春、根津公一、原俊夫、島田紀夫、伊藤文吉、嶋崎丞、渡邉妙子、榎本徹、島田康寛、高階秀爾、耕三寺孝三、長谷川三郎、藤田直義(理事)。谷新、西村勇晴(監事)。敬称略
青柳氏は「私は、3期6年で退任と申し上げておりました。今思い出しますのは、全美の悲願でもあった美術品に関する国家補償を国会で成立、法律化した事。もう一つは、3.11が起きたあと、文化財レスキューで全美からは学芸員が被災地に赴き、更にチャリティーオークションを実施して1億5千万円を売上げたことです。それぞれ故中川昭一財務大臣(当時)や、淺木正勝東京美術倶楽部社長に大変お世話になりました。有難い不思議な縁です。皆さん、先人の方々のお蔭です」と謝辞を述べた。
建畠新会長は「剛腕の青柳先生にたいし、私は温和なる調整型として美術館界発展のために尽くしてまいりたい。美術館を取り巻く状況は、財政的にも厳しいままであり、指定管理者制度、独立行政法人の問題もあります。皆様のご協力も得てしっかりやっていきたい」と挨拶した。
総会後、特別セッション「復興の取り組みのなかで―全美による支援事業の意義と課題―」が行われた。
来年の総会は広島県立美術館で5月22日(木)、23日(金)に開催予定。
「新美術新聞」2013年6月11日号(第1314号)3面より
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