Ohara Contemporary at Musabi記者会見開催
5月26日(月)より武蔵野美術大学美術館で開催される「Ohara Contemporary at Musabi」の記者会見が12日(月)、東京ミッドタウンにて行われた。登壇者は同館館長・田中正之氏、同大准教授・杉浦幸子氏、大原美術館学芸課長・柳沢秀行氏、現代美術家・ヤノベケンジ氏の4名。
今展は昨年4月に岡山県・倉敷市の大原美術館で開催された「Ohara Contemporary」展を再構成し、関東圏では初めて同館の現代美術コレクションをまとまったかたちで公開する試み。展示は大原美術館のプログラムに基づき構成され、「ARKO」、「AM倉敷」、「VOCA展大原美術館賞」などそれぞれに関連した作家が30名参加する。また多数のトークイベントやワークショップに加え、ヤノベケンジ氏を迎え地元の中学生に働きかけていくパブリックプログラム「みらいのたいよう計画」も実施されるなど、多角的な展覧会となる予定だ。
会見に先立ち甲田洋二武蔵野美術大学長は「大原美術館は開館当初からアートに対する極めて積極的かつ自主的な支援を行っている。また美術館を通じて行う教育活動に関しても長い歴史と実績がある。そのような高い理念を貫く大原美術館と交流活動が出来ることは本学にとって大きな喜び」と述べ、「都心より遠隔の地にある本学だが、よきものを見るために遠くまで足を運ぶことで得る充実感を多くの人々に感じとって欲しい」とした。
展示構成について
今展は大原美術館での展示と比較し、一部作品が入れ替わっており展示構成にも変化をつけている。これに関して田中氏は「大原美術館は長きに渡りアーティスト支援活動を行っており、今展は武蔵野美術大学としてその活動へ感謝とオマージュを捧げるものとして企画した。そのような背景もあり、出展作家それぞれについて支援プログラム毎に、どのような活動が行われているのかを紹介するような展示となっている」と概要を述べた。
大原美術館のアーティスト支援活動
また柳沢氏は大原美術館がこれまで行ってきたアーティスト支援の取り組みついて次のように語った。
「大原美術館創立者の大原孫三郎は企業人だったが、稼いだ資金を非営利事業に注ぎ込んだ。洋画家・児島虎次郎もその支援を受けた1人。その児島からの提案を受け、優れた西洋美術の収集と公開が館の礎として始まったという経緯がある。また孫三郎の跡を継いだ總一郎は『美術館は澱んだ倉庫のような場所ではなく、生きて成長しなくてはいけない』ということを明言していた。生きて成長するということはコレクションの拡大と教育普及活動を意味し、それとともに同時代の新しい価値を求める作家たちを積極的に支援するということを引き継いでいく。
このように我々の美術館は設立当初から同時代に深く関わりながら美術館を運営してきた。更に新しい価値を切り拓こうとするアーティストたちを積極的に支援するという気持ちに満ち満ちている。80年の歴史を通じて収集したコレクションとこのハートを21世紀の今、どのように活かしていけばいいのか、この点に重きを置いている。」
みらいのたいよう計画
今展では関連企画として、「武蔵野美術大学 美術館・図書館パブリックプログラムvol.1 みらいのたいよう計画」が開催される。このプログラムは今展の出展作家でもあるヤノベ氏と同大学生による中学校訪問、中学生の招待、ワークショップの実施など、これまでの美大にはない新しい試みだ。またヤノベ氏の作品である《サン・シスター》も象徴的存在として特別展示されるなど、ワーク・イン・プログレス型のプロジェクトとなっている。
同プロジェクトについて杉浦氏は「今展では『公的な世界と美術館をつなぐ』様々なプログラムが行われるが、このプログラムはヤノベ氏とともに、美術館から外に出る試みであり、アートと教育の新しい連携を目指し、大学美術館と芸術文化学科がハブとなって行っていく」と説明。具体的な内容に関しては「ヤノベ氏とボランティアスタッフの学生が一緒になって、中学生に会いに行くというかたちで進めている。今回が初めてのプログラムということもあり、まずは身近な地域である小平市他4市を中心にコンタクトを取っており、訪問先で出会った中学生に美術館にも来てもらうということを考えている」と述べた。
現時点で訪問が決定しているのは3校だが、国分寺市・国立市・立川市・所沢市などの学校にも打診しており、また夏休み中の訪問も受け入れていく予定だという。
またヤノベ氏は今展への参加について「《サン・チャイルド》の兄妹のような存在である《サン・シスター》を特別展示する。自分自身、京都造形芸術大学の教員とし学生と接しているが、一アーティストとして自分の背中を見せるようなかたちの授業をしている。自分のプロジェクトに関わることで美術あるいはアートはどういうかたちで社会にコネクトしていくのか、そういうことを見せている」と自らの経験を踏まえ、「今回の『みらいのたいよう計画』についてもそのような意図があると思っている。《サン・シスター》を持ち込むことで、どのような化学反応が起こるのか楽しみにしているし、未来の子どもたちあるいは未来の日本、世界をつくっていくようなきっかけになるような気がしている」とした。
これを受け杉浦氏は「現在はどの美術館も教育普及活動に力を入れているが、大原美術館ほど仕組みを整えつつ心のこもったプログラムをしている美術館はほぼないと思う。その大原美術館の展覧会を本学でやるとなり、新たな挑戦として、これからの未来を創っていくそして自分自身にも深く向かい合おうとしている年代である中学生に焦点を当てた。そんな中学生にヤノベ氏が会いに行った時、どのような化学反応が起こるのか。プログラムはそれぞれの学校に応じてカスタムメイドで作っていくので、そこでの有機的な反応を見ていきたい」と抱負を語った。
Ohara Contemporary at Musabi
【会期】 5月26日(月)~8月17日(日)
【会場】 武蔵野美術大学美術館 (東京都小平市小川町1-736) ☎042-342-6003
【休館】無休
【開館時間】 10:00~18:00 (土・日曜・祝日は17:00まで)
【料金】無料
【関連リンク】 武蔵野美術大学 美術館・図書館
▽オープニングイベント
【日時】 5月26日(月) 16:30~18:00
【会場】 武蔵野美術大学 美術館ホール
【出演】 高階秀爾(大原美術館館長)、大原謙一郎(大原美術館理事長)、柳沢秀行(大原美術館学芸課長)、田中正之(武蔵野美術大学 造形文化・美学美術史教授/美術館・図書館館長)
▽トークイベント①
【日時】 6月5日(木) 16:30~18:00
【会場】 武蔵野美術大学 美術館ホール
【出演】 浅見貴子(出展作家)、柏原由佳(出展作家)、三瀬夏之介(出展作家)、北澤憲昭(武蔵野美術大学 日本画学科客員教授)、尾長良範(武蔵野美術大学 日本画学科教授[モデレーター])
▽トークイベント②
【日時】 6月21日(土) 14:00~15:30
【会場】 武蔵野美術大学 美術館ホール
【出演】 藤森照信(建築史家、建築家)、松葉一清(武蔵野美術大学 造形文化・美学美術史教授)
▽トークイベント③
【日時】 7月5日(土) 14:30~16:00
【会場】 武蔵野美術大学 美術館ホール
【出演】 辰野登恵子(出展作家)、東島毅(出展作家)、赤塚祐二(武蔵野美術大学 油絵学科教授)、是枝開(武蔵野美術大学 芸術文化学科教授)、沢山遼(美術批評、武蔵野美術大学非常勤講師[モデレーター])
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