内藤礼の存在と作品に迫るドキュメンタリー、2015年初夏公開へ
「地上に存在していることは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに探求を続けている現代美術作家・内藤礼。その内藤をテーマにしたドキュメンタリー映画「あえかなる部屋 内藤礼と、光たち」が2015年初夏の公開に向けたクラウドファンディングを11月22日より実施する。今作の制作を指揮するのは過去に現代美術家・杉本博司を追ったドキュメンタリー「はじまりの記憶 杉本博司 Memories of Origin」も手がけた(株)テレビマンユニオンの中村佑子。
これまで自らを撮影されることを殆ど拒んで来た内藤礼だが、制作のきっかけついて中村は「内藤礼は、私たち現代の人間が失った感覚を保存している人。豊島美術館《母型》を、内藤礼さんを、そしてたぶんその先にある世界や私の存在のあり方を撮りたいと。内藤さんと初めてお会いしたとき、その想いを告白したと記憶しています。彼女は「映画をつくること」を許してくれました」としている。
取材者が内藤に取材依頼を行うところからはじまる今作。しかし次第に内藤はカメラで写されることに違和感を抱くようになり、「内藤にはカメラを向けずドキュメンタリーを作る」という方向へと転換していく。一方、映画では内藤の代表作豊島美術館<母型>に誘われ、集まった5人の女性たちが登場。2年という長期に渡る内藤とのやり取りを軸に、女性たちの存在が交差していく今作は、幾多の有形無形のものたちが物語を織り成す、フィクションともドキュメンタリーともつかない新しい映像表現となっている。
「女性たち」の物語の基点となり、静謐ながら強靭な存在感を放つのは、モデル、女優として活躍中の谷口蘭。そのほか佐々木靖之(撮影)、タラ・ジェイン・オニール(音楽)、シアター・プロダクツ(衣装)、有山達也(宣伝美術)等、様々な分野の一線で活躍する才能が集結する。
中村監督メッセージ(一部抜粋)
内藤礼さんはご自分のアートのテーマを「地上に存在していることは、それ自体、祝福であるのか」といいます。
しかし、なぜその問いを、問わざるを得ないのか、ずっと考えていました。その設問を、問わざるを得ない切迫感が、私の中にもありました。私たちは、存在することだけで何かを与え、何かを受け取っている。なのに、それに気がつかず、虚の淵をさまよう人が数多くいます。
内藤さんを撮らずに映画をつくると決めたとき、私は内藤さんが差し出してくれる世界の光、その作品から受け取ってきたことを映像にしたいと思いました。生というものの無根拠性、その苦しみを乗りこえる能動的で、肯定的な声が、いま私たちに投げかけてくれるものがあると信じて。
ドキュメンタリーともフィクションともつかない、新しい映画の形に挑戦します。どうか皆さんの目で見届けてください。
この映画を、皆さまにご支援頂けたら幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。
※8月18日追記
9月19日よりシアター・イメージフォーラムにて公開が決定。
時間は11:00~、21:00の2回。
【関連リンク】あえかなる部屋公式サイト
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