オルセー、故宮、日本国宝の三つ巴
全国の主な美術館・博物館や展覧会を主催する新聞社やテレビ局を対象に、大型美術展の総入場者数調査を前・後期に分けて行い、「入場者数ベスト20」として表に掲げた。2014年は、海外の有名美術館コレクションや日本国宝など国内外の名品が変わらぬ人気を見せた一方、国立美術館と私立美術館、あるいは美術館と博物館が連携した企画や、日本であまり知られていない画家の展覧会など、新しい動きも見られた。
約70万人が入場した「オルセー美術館展」(国立新美術館)に迫るのが「台北 國立故宮博物院」展だ。東京国立博物館と九州国立博物館の2会場を合わせると約66万人。「日本国宝展」(東京国立博物館)が約39万人、「正倉院展」(奈良国立博物館)が約27万人、「国宝 鳥獣戯画と高山寺」(京都国立博物館)が約20万人、この3展を合わせると約86万人。有名美術館のブランド力、國立故宮博物院の「翠玉白菜」や「肉形石」などの花形コレクション、日本国宝が三つ巴となって、14年の美術館動員に貢献したと言える。
印象派の人気は岩盤だが、入場者の目も肥え、ひねりある企画が求められつつある。導入章と最終章にマネの作品をまとめた「オルセー美術館展」は、印象派作品とともに同時代のレアリスム絵画やアカデミスム絵画も展示し、マネなどの革新性を際立させた。30万人以上を集めた「モネ、風景を見る眼」(国立西洋美術館)も新たな風を感じさせた。豊かなモネコレクションを誇るポーラ美術館との共同企画により、海外美術館の力を借りず2館のみのコレクションや寄託品で、近代風景画に革新をもたらしたモネの「眼」の深化の秘密を解き明かした。
日本美術では、浮世絵の健闘が光る。「ボストン美術館浮世絵名品」(名古屋ボストン美術館、神戸市立博物館、北九州市立美術館分館、上野の森美術館)は4館で約46万人、「大浮世絵展」(江戸東京博物館、名古屋市博物館、山口県立美術館)は3館で約38万人。10万人以上が入った山口県立美術館では入場規制も行われる盛況ぶりだった。
大物画家の回顧展は、日本での開催が「アンディ・ウォーホル展」(森美術館)は約20年ぶり、「バルテュス展」(東京都美術館、京都市美術館)は約10年ぶりとあって、多くのファンが押し寄せた。
表外で挙げたいのが、「イメージの力―国立民族学博物館コレクションにさぐる」(国立新美術館)。国立民族学博物館(大阪府)の創設40周年を記念する同展は、同館と国立新美術館との共同企画によって実現。「イメージ」をテーマに、歴史民俗系博物館にありがちな地域・時代と分類ではなく、資料の造形性や機能に着目した展示構成も見どころの一つだった。「みんぱく」が所蔵する膨大なコレクションから選りすぐった仮面や神像など、資料の放つパワーが展示室に満ちた。
「水辺のアルカディア―ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界―」(Bunkamuraザ・ミュージアム)や「ヴァロットン―冷たい炎の画家」(三菱一号館美術館)も特記したい。いずれも19世紀末に活躍した画家だが、日本ではまだ馴染が薄い。今後も、様々なアートが生まれた時代において、印象派とは異なる道を歩んだ画家たちが紹介されることを期待したい。
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