【レポート】 2015年前半の主な展覧会を振り返る

2015年07月08日 18:36 カテゴリ:最新のニュース

 

全国の美術館、展覧会を主催する新聞社・テレビ局を対象に、2015年1月~6月に開催(2014年末に開始、あるいは会期途中の展覧会も含む)された大型展覧会の入場者数調査を行った。今期はルーヴル美術館や大英博物館など、世界有数の美術館・博物館の優品を紹介する大型展が人気を集めた。一方、美術館での開催ではないものの「チームラボ」展のようにアートの新たな可能性を示したものが動員を伸ばすなど、今日における美術表現のひろがりを示す結果となった。

 

2015年前半の主な大型企画展入場者数(会期順)

展覧会名会期会場主催入場者数
チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地14/11/29~5/10 (137)日本科学未来館日本科学未来館、チームラボ、日本テレビ放送網、BS日テレ465,995
探検!体験! 江戸東京14/12/2~3/8(79)東京都江戸東京博物館 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館、朝日新聞社133,715
みちのくの仏像1/14~4/5 (73)東京国立博物館東京国立博物館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社 179,521
新印象派-光と色のドラマ1/24~3/29(56)東京都美術館東京都美術館、日本経済新聞社148,293
チューリヒ美術館展 印象派からシュルレアリスムまで1/31~5/10 (87)神戸市立博物館神戸市立博物館、朝日新聞社、朝日放送※ 218,044
ベスト・オブ・ザ・ベスト1/31~5/17 (93)ブリヂストン美術館ブリヂストン美術館151,966
ワシントン・ナショナル・ギャラリー展
~アメリカ合衆国が誇る印象派コレクションから
2/7~5/24 (95)三菱一号館美術館三菱一号館美術館、読売新聞社、日本テレビ放送網、ワシントン・ナショナル・ギャラリー167,459
ルーヴル美術館展 日常を描く
―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄
2/21~6/1 (89)国立新美術館国立新美術館、ルーヴル美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社662,491
「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術際2015」3/7~5/10京都市美術館、京都府京都文化博物館ほか京都国際現代芸術祭実行委員会、一般社団法人京都経済同友会、京都府、京都市264,218
生誕三百年 同い年の天才絵師 若冲と蕪村3/18~5/10 (48)サントリー美術館読売新聞社※ 155,194
ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美3/21~6/28 (88)Bunkamura ザ・ミュージアムBunkamura、NHK、NHKプロモーション、毎日新聞社※ 183,126
マグリット展3/25~6/29 (86)国立新美術館国立新美術館、ベルギー王立美術館、読売新聞社、TBS338,478
徳川家康没後400年記念特別展「大 関ヶ原」展3/28~5/17 (48)東京都江戸東京博物館公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館、テレビ朝日、BS朝日、博報堂DYメディアパートナーズ222,953
大英博物館展 100のモノが語る世界の歴史4/18~6/28 (62)東京都美術館東京都美術館、大英博物館、朝日新聞社、NHK、NHKプロモーション300,436
鳥獣戯画―京都 高山寺の至宝―4/28~6/7 (36)東京国立博物館東京国立博物館、高山寺、朝日新聞社239,115
●調査対象:2015年1月~6月にかけて全国で行われた企画展の中から任意で抽出。
●入場者数:主催館発表による(※はメディア数値発表)。
●会期:カッコ内は開催日数。「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術際2015」は会場ごとで異なるため省略。

 

ヨハネス・フェルメール 《天文学者》1668年
Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / René-Gabriel Ojéda /
distributed by AMF – DNPartcom

調査対象となった展覧会の中で最も入場者数が多かったのは、国立新美術館「ルーヴル美術館展」。総入場者数は66万2,491人、一日辺りの入場者数7,444人で、いずれも最も高い数字であった。同展は「風俗画」という切り口から同館コレクションを紹介するもので、16世紀のティッツァーノ、ブリューゲルから19世紀のコロー、ミレーまで、西洋絵画の巨匠たちによる作品を一堂に紹介した。なかでも目玉となったのが、初来日のフェルメール「天文学者」。ルーヴルが所蔵するフェルメール2点のうちの1点で、めったに館外に出ることがないため、今展への貸出は大きな話題となった。「ルーヴル美術館展」は現在、京都市美術館で開催中(9月27日まで)。そのほか「大英博物館展」(東京都美術館)、「チューリヒ美術館展」(神戸市立博物館)、「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(三菱一号館美術館)など、海外の美術・博物館コレクションを紹介するものが人気を集めた。

 

一方、国内にも優れたコレクションがあることを示したのが、ブリヂストン美術館「ベスト・オブ・ザ・ベスト」である。長期休館を前に人気の印象派から藤島武二、青木繁ら日本の近代作家、ポロックなど戦後美術まで、出し惜しみのない贅沢な展観で約15万人を陶酔させた。また、今秋開館20周年を迎える千葉市美術館では辻惟雄、小林忠、河合正朝の歴代館長が選定した所蔵名品展を開催(4/10~6/28)。美術館活動の軸となるコレクションを通じて20年の歩みを紹介しつつ、美術館の役割について再考を促す試みであった。

 

また、昨今アートの領域が広がり、多様な展覧会が各所で開催される中、日本科学未来館の「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」は、入場者数とともに特筆すべきものである。チームラボは、最先端の技術を用い、商品開発からデジタルアート作品の制作まで多様なプロジェクトを展開する“ウルトラテクノロジスト集団”。これまで国内外で作品を発表し、今年5月には愛知の名古屋画廊で個展を開催して話題となった。初の企画展となる同展では、その代表作とともに、子供たちに創造的な学びの体験を提供するプロジェクト「学ぶ!未来の遊園地」を展示。ファミリー層を中心に約46万人を動員した(同館企画展の入場記録を更新)。いわゆる「美術展」とは異なるものであったが、アートの新たな可能性を感じさせた展覧会として評価したい。

 

「ルーヴル美術館展」会場入り口の様子 ©NTV

 

日本科学未来館「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」会場風景

 

【関連記事】 レポート:2014年美術展入場者数ベスト20

 


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