躍進!21世紀の未来を切り拓く大阪芸術大学 〈2〉

2012年07月31日 16:10 カテゴリ:その他ページ

 

規模拡大は社会からの人材のニーズに答えた成果 塚本

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―大阪芸大で作った番組が地域の放送、サンテレビやラジオ大阪の番組等で放送されています。こうした取り組みはかなり実践的ですがどのような目的があるのでしょうか。

 

塚本 TVに関して言いますと、もともとは大阪芸大テレビという事務局を作りまして、大阪芸大グループの情報発信を目的としています。そしてアナウンサーもアナウンスコースの学生が担当しており、主に学生の作品や活動を社会に広報しています。あとラジオ番組に関して、これは卒業生をメインにして、卒業生の活躍を社会に広めたい。大阪芸大の先生たちの活躍やプロフィール、どんな授業をしているのか、あるいは在校生がどういうところで展覧会やっているとか、こういう音楽活動やっているよとか、情報伝達の一つのツールとして使ってもらいたいということなのです。要は学生たちの活躍を発信するのに、学生に使ってもらいたいという意図です。

 

絹谷 卒業生の層というか、もの凄い塊り・集団です。これが日本全国に散らばり、各高校・中学、会社などあらゆるところで美術関係者の皆さんが日本の芸術文化を支えて下さっている。その層の厚さと幅の広さ、これは日本の基礎、芸術文化の発展にたいへん寄与していると思います。私はいま日本藝術院で、文化庁と組んで各大学・高校・小中学校・肢体不自由児の学校などに派遣授業を会員の皆様とともにやっているんです。そしていろんなところへ出向きますが、そこに大阪芸大出身の先生たちが張り付いて、生徒たちに情操教育を豊かに育てておられる。今、こういうことが荒れすさぶ社会では非常に大切だと思います。芸大では人数・量のスケールが違うのです。

 

―たとえば学生作品オークションとか、『アートコンペティション2012』、そういう新しい試みも積極的に取り組まれていますが。

 

塚本 『アートコンペティション2012』については、大きな視点で言うと美術や音楽の芸術教育のすそ野を広げたいというところが一番です。高校生や若手に対してそういう賞を設けることによって、高校生たちに目標としてもらいチャレンジしてもらう。それが大きなステップの役割になっていってもらいたいというところから始めました。優秀な学生を探したいという面もあるのです。結構な応募の数で、2千5百とか3千近く来ます。大賞はその中で1点ですから。なかなか、実力はあっても運がないと通らない。そこで1位になるということは、かなりのものを持っている人が入ってきます。

 

絹谷 絵をオークションするというのは、生きている芸術―芸術は芸術のためだけじゃないという訓練、一つの柔軟な考え方ですね。

 

塚本 オークションを始めたのは、学生の作家デビュー支援のためです。学生のうちにこういうところへ出して、いろんな画廊にも案内状を送りますので見に来てくれるんですよ。で、いい人がいたらマークしておいてもらおうかなと(笑)。そこまでなくても、自分の作品が売れますと自信にもつながるし、学生も非常にうれしそうにしています。

 

絹谷 皆、私らが若いころ、とにかく絵描きは大変だろう、絵は売れないだろうと囁かれる。ところが実際問題としては、自分が描いた絵―これは人に描かされてないのです。それを自分で提示するというのは、もうこれ以上の自由はないはずです。いい絵とは何なのか?僕も若い頃に言われました。「絹谷さんみたいないい絵を描いていたら売れないよ、日本では」と、くるわけです。妥協しろと暗に言われるのですが、これにまどわされてはいけないんですね。世の中にはいろんなタイプの人がいっぱいいる。きれいな絵が売れるというのは、意外とそれも落とし穴なのですよ。そういうことをやっている人は現に日本には山ほどいる。きれいな絵、そんな絵はすぐ飽きられちゃったりするし、芸術的に自由に飛ぶ翼を持っていません。Aという絵もBという絵も同じなんですね、そういう絵は。むしろ手が動かない絵、動いてはいないけど心が絵の中にズボーッと入り込む絵、こういうのはやっぱり人の心を撃つんです。長い時間かけていくと。そういうファンもいます。だから、皆さん絵描きになるのは大変だろうと言われるんですけど、たとえば私なんかは食事と交換とか、絵具と交換とか、いろんな交換をしたものです。それはお金には替わらないけど、ものを食べようとしたらお金要りますから、それが交換できるんです。そして絵の世界には国境がないのですね。アフガニスタンへ行って7行ほど銀行をまわったんだけど、円が替わらないんです。ところが私が顔を描いてあげると、それがその日の食事代に即座になります。芸術というのは本当にありがたいです。

 

歌でもそうなのです。ですから最高のリスク・テイキング。本当に困ったときのリスク・テイキングはアート&ミージックにある。それを一番知っているのがユダヤの人たちです。ここにいたら殺される、難民になる、それで出て行っちゃう。そういうときに戦争に敗けたところの紙幣は使えない。もうリトグラフより具合が悪いんですよ。そういう意味でも、欧米の人たちがなぜ芸術を愛するかというのは、ただ単に絵画が装飾美術品という訳ではないのです。自分の命をいざというときに助けてくれる。そういった生命の生存への条件でもあるのですね。

 

それからイメージです、イメージを高める。たとえばレオナルド・ダ・ヴィンチが空を飛びたいというイメージを持っていると、これが何百年後にヘリコプターになったとか、そういう「思う」という心、愛を信じるという心、それを養うのがアート&ミュージックなのです。これがわが国には割合足りない。

 

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