美術界の主な出来事(1月~6月)
(※)・・・各出来事に関する記事へのリンク
1月
第54回毎日芸術賞に画家・辰野登恵子氏ら(※) / 第16回岡本太郎現代美術賞に加藤智大氏(※) / 東京国立博物館東洋館リニューアルオープン(※) / 千葉県立美術館一時休館
2月
第5回絹谷幸二賞に橋爪彩氏、同奨励賞に今津景氏(※) / FACE展 2013 損保ジャパン美術賞、グランプリに堤康将氏(※) / 「アール・ブリュット ネットワーク」が発足(※)
3月
平成24年度日本藝術院賞に槇文彦(恩賜賞)、能島和明、佐藤哲、寺池静人の各氏ら(※) / 第63回芸術選奨文部科学大臣賞に川俣正、奈良美智、玉蟲敏子、河口洋一郎、同新人賞に川内倫子、清水恵美子の各氏ら(※) / 2013年のVOCA賞に鈴木紗也香氏(※) / 2012年美連協大賞に「すべての僕が沸騰する 村山知義の宇宙」(※) / 東日本大震災復興支援「若冲が来てくれました―プライスコレクション 江戸絵画の美と生命―」が東北3県を巡回(※) / アートフェア東京2013開催、4日間で約4万4千人が来場(※)
4月
大原美術館で現代アートの特別展「Ohara Contemporary」開催(※) / 河口湖美術館「ワンダフル・マイ・アート-高橋コレクションの作家たち」展開催(※)
5月
公益社団法人日展理事長に寺坂公雄氏(※) / 佐久市立近代美術館が開館30周年(※) / 東京・湯島に国立近現代建築資料館開館(※) / 京都国際現代芸術祭2015のアーティスティックディレクターに河本信治氏(※)
6月
富士山、世界文化遺産に登録。正式名称は「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」 / 東京美術倶楽部代表取締役社長に三谷忠彦氏、同会長に淺木正勝氏(※) / 第55回ヴェネチア・ビエンナーレ、日本館が特別表彰受賞、館での受賞は初(代表作家は田中功起氏)
美術関係者アンケート(1)
2013年を振り返り、作家、美術評論家、美術館館長、美術館学芸員等の皆様にアンケートを実施。38名からご回答をいただきました。※会場名は初出のみ
【アンケートについて】
回答者(肩書き) ※敬称略・各項目で50音順
2013年、印象に残った展覧会 (展覧会名は適宜省略)
◆・・・美術館・博物館 ◇・・・画廊・百貨店
✍・・・美術界において印象に残った出来事
作家
池口 史子 (洋画家、立軌会同人)
◆①出雲阿国展 (島根県立美術館)
✍東京の美術館は招待日以外に行くと、人の頭の間から作品を見るという異常な混み方である。作品の良さよりその雰囲気にうんざりしてしまう事が多い。世の中それ程美術に関心のある人が増えたとは思えないのにどういう現象なのか。とても不思議である。
入江 観 (洋画家、春陽会会員)
◆①木村荘八展 (東京ステーションギャラリー) ②赤堀尚展 (佐野美術館)
◇①岩井壽照自選展 (銀座井上画廊) ②瀧田亜子展 (なびす画廊)
✍板橋区立美術館での展覧会を見損なって残念であったが1950年代の日本の美術状況を再考したい気持ちがある。美術というものが、何を描こうとも、人間の内側に向かっていた、その背景に何があったのかを思い起こしてみたい。
奥谷 博 (洋画家、独立美術協会会員)
◆①フランシス・ベーコン展 (東京国立近代美術館) ②会田誠展 天才でごめんなさい (森美術館) ③アントニオ・ロペス展 (Bunkamura ザ・ミュージアム) ④横山大観展 (横浜美術館)
✍4つの展覧会は心に深く残った。学芸員の方々の努力も伝わってきた。特に横浜美術館の大観展は、これまで何度も開催されている大観展を同じような展覧会にしない努力が見られたように思います。
笠井 誠一 (洋画家、立軌会同人)
◆①ルーヴル美術館展 (東京都美術館) ②ターナー展 (東京都美術館)
◇①ベルナール・カトラン展 (吉井画廊)
✍以前の様な活気は見られないがひと頃の安易な展覧会に比べて、質の高い幾つかの企画が目立った。しっかりと自分を見つめ、物事を考えるためには悪い時代とも云えないのではないか。
北郷 悟 (彫刻家、東京藝術大学教授)
◆①アントニオ・ロペス展 ②国宝興福寺仏頭展 (東京藝術大学大学美術館)
✍魅了された展示として「国宝興福寺仏頭展」(東京藝術大学大学美術館)は、規模の大きさはないが空間表現に優れたものを感じた。通常の伽藍では見られないような距離感と流れ、または質感のこだわりを併せ持った展示は教育研究機関らしい試みである。
小杉 小二郎 (洋画家)
◆横山大観展
◇東美特別展丸栄堂ブース「髙山辰雄展」 (東京美術倶楽部)
✍日展の審査問題です。
佐々木 豊 (洋画家、国画会会員)
◆①絹谷幸二展「希望のイメージ」 (平塚市美術館) ②福田美蘭展 (東京都美術館)
◇①開光市展 (日動画廊) ②向川貴晃展 (ヴァニラ画廊)
✍絵画は消滅した。今秋同世代の個展の案内状は1通も来なかった。用途のある絵のみになった。1.インテリア絵画(例、花鳥山水画)、2.写真の代用(細密写実画)、3.株券替わり画(内外市場人気銘柄)、4.観光客誘致お祭り用美術(アートフェア)
佐藤 泰生 (洋画家、新制作協会会員)
◆①ロン・ミュエック展 (カルティエ財団現代美術館) ②フランシス・ベーコン展
✍パリで見たオーストラリアのロン・ミュエックの彫刻と日本の東京国立近代美術館でのベーコン展が印象深かった。ミュエックは見る人がその彫刻たちの立会人のような気分にさせられる未知の体験だったし、ベーコンの世界はとてつもなく切れ味の良い自虐的な世界だった。
滝沢 具幸 (日本画家、創画会会員)
◆①ターナー展 ②吉岡堅二新収蔵品展 (東大和市立郷土博物館)
◇①桜井寛展 (日本橋髙島屋) ②秋の山川輝夫展 (清澄画廊)
✍創画会は本年、第40回の記念展を開催しました。1974年の結成、第1回展を東京都美術館において開いた時を想い感慨を覚えます。
土屋 禮一 (日本画家、日展副理事長)
◆①やきものが好き、浮世絵も好き 山口県立萩美術館・浦上記念館名品展 (根津美術館) ②特別展「京都 洛中洛外図と障壁画の美」 (東京国立博物館)
◇①夭折の天才展 (ギャラリーうちやま) ②大石芳野展 (コニカミノルタプラザ)
✍興福寺仏頭展の3Dが像に始まり、ミケランジェロ展、特別展「京都」等の映像紹介に目を見張った。4K高画質にリアルな音声、こちらが観る展覧会から観せられる展覧会を暫く楽しんでみたい。
中村 宏 (画家)
◆①MOTコレクション「私たちの90年 1923―2013」 (東京都現代美術館) ②六本木クロッシング2013 アウト・オブ・ダウト (森美術館)
◇①豊嶋康子「パネル」 (秋山画廊) ②中ザワヒデキ「何でも有りは無し」 (GALLERY CELLAR)
✍東京都現代美術館の常設展示としてMOTコレクション「私たちの90年 1923―2013」が4月と10月に2回あった。これは今までの収蔵作品の常設展示ではあまりなかった、学芸員らのより明解な展示理念に基づくものであったように思う。
山中 宣明 (洋画家、二科会理事)
◆①アンドレアス・グルスキー展 (国立新美術館) ②フランシス・ベーコン展
◇①舟越桂展 (8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery) ②10th Anniversary (gallery a-cube)
✍抽象系では具体美術の再評価企画があり、具象系ではフランシス・ベーコン等骨太な絵画の核心に迫る展示も貴重であった。洛中洛外図展やミケランジェロ展等、東西の古典企画も充実していた。現代美術や古典、具象や抽象の多様な価値観をパラレルに楽しみ、作品の質で鑑賞する土壌が育っていると感じる。
美術評論家、美術館館長、美術館学芸員ほか
赤津侃 (美術評論家)
◆①フナイタケヒコ「絵画の光景」 (鳥取県立博物館) ②神田日勝・浅野修生誕75年記念展 (神田日勝記念美術館)
◇①和田幸三展 (ギャラリー檜) ②吉野辰海展 (ギャラリー58)
✍税制面などで優遇を受ける公益法人「日展」書・篆刻の運営、審査、入選配分などの不公平さが、動かぬ証拠によって朝日新聞に報道された。美術界の公募展の常識は社会の不正。公募展の意義を見直し、因習を脱する改革へ踏み出す“日展106年”に。
五十嵐 太郎 (東北大学大学院教授、あいちトリエンナーレ2013芸術監督)
◆①フランシス・ベーコン展 ②坂茂 建築の考え方と作り方 (水戸芸術館)
◇①青野文昭展「それぞれの床面・流出・移植 2013」 (ギャラリーK) ②Janet CARDIFF & George Bures MILLER 「Experiment in F# Minor」 (ギャラリー小柳)
✍個人的な体験だが、あいちトリエンナーレ2013に対する『中日新聞』の酷評座談会に対して、筆者がネット上で反論を行い、それが5万以上の閲覧数になったこと。地元紙における美術の議論の限界と、異なる場での言説の可能性を感じた。
川口 直宜 (美術評論家)
◆①竹内栖鳳展 (東京国立近代美術館) ②特別展「上海博物館 中国絵画の至宝」 (東京国立博物館)
◇①北川健次展 (日本橋髙島屋) ②王舒野展 (日本橋髙島屋)
✍日展の審査員問題が徹底的に自浄出来るか、である。この問題は、以前から水面下では知られていたけれども。
小林 忠 (岡田美術館館長)
◆①特別展「上海博物館 中国絵画の至宝」 ②カイユボット展 (ブリヂストン美術館)
◇①「小さき愛らしきもの」 (ロンドンギャラリー)
✍手前味噌で恐縮ですが、箱根小涌谷に新しい私立美術館「岡田美術館」が開館したことです。日本と東アジアの美の遺産を通覧できる本格的な美術館で、その開設準備に忙殺される1年でした。
塩田 純一 (新潟市美術館館長)
◆①桂ゆき展 (東京都現代美術館) ②あなたの肖像 工藤哲巳回顧展 (国立国際美術館)
◇①丸山直文「夜みる夢を構築できるか」 (シュウゴアーツ) ②富井大裕「直線と周囲」 (swithc point)
✍各地の美術館で充実したデザイン展が目立った。デザインの評価の高まりと言えようが、一方で美術の枠組みが揺らいでいるということでもある。アール・ブリュットへの着目といい、創造とは何かを問う地殻変動が生じているようだ。
清水 康友 (美術評論家)
◆①狩野山楽・山雪展 (京都国立博物館) ②竹内栖鳳展
◇①笹井青依展 (ANDO GALLERY) ②田鶴濱洋一郎 (art space kimura ASK?)
✍大英博物館で大規模な春画展が開催された。浮世絵で春画は役者絵、美人画、風景画と共に重要なジャンルだが、我が国では道徳的、倫理的にこの展覧会開催は困難であった。本家日本もこの問題に正面から向き合うべき時なのではないか。
宝木 範義 (美術評論家)
◆①島田章三と島田鮎子展 (メナード美術館) ②赤堀尚展 (佐野美術館)
◇①池田カオル乾漆展 (日動画廊) ②鞍掛徳磨「止まる人」展 (キッド・アイラック・ホール)
✍オリンピックの東京開催決定に沸く一方で、有意義な美術館活動と優れた展覧会の開催に対する支援が削減され、現代日本の文化に見る美術の意義と役割が、今後さらに落ち込んで活力を失うようなことがあってはならないと危惧する。
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