【女木島】
高松港の目の前、フェリーで20分の鬼ヶ島伝説が残る〈女木島〉では、盆栽県・香川の盆栽の未来を探ろうと、平尾成志×瀬戸内工芸ズ。/香川県盆栽生産振興協議会による「feel feel BONSAI」。庭や室内、浴室に、縦横無尽に盆栽や樹木を配し、盆栽の楽しさ、美しさ、植物の生命力など、盆栽=アートに改めて気付かせてくれる。
大竹伸朗の増殖する「女根」はヴィヴィットで強力な存在感。南アジア的カオスが息づき、何がなんだか圧倒!?の一語。直島の銭湯「I♥湯」とは異なる得体の知れない生命の気配を感じた。
画家・依田洋一朗のISLAND THEATRE MEGI「女木島名画座」は、依田が描いたチャップリンはじめ往年の銀幕スターの肖像や名シーンに囲まれた、映画ファンならずとも夢のシアター。48席のシートと小ぶりなスクリーンが心地良いスペース。映画より幕間が楽しみかも。
その目と鼻の先、“レストラン イアラ 女木島”では金沢21世紀美術館の「スイミング・プール」で知られるレアンドロ・エルリッヒ「不在の存在」。だまし絵的不可思議空間と矩形の中庭。枯山水にじっと目を凝らせば、タイトルの意味が判明する。「女木島名画座」とコラボした映画と食のツアーも企画予定とのこと。
防風用の石垣に肩を寄せ合うように守られた廃屋を使ったカオス*ラウンジ(日本)「鬼の家」(第3会場)では、低い石門をくぐると、家屋内部にはびっしりと手描きの絵が。正に混沌とした状態。庭には奈良の石舞台よろしく亀の洞窟。身を屈めて中に潜ると「龍宮」丸が水に浮かび、異界の領域へと誘う。近所の「鬼の記念館」(第2会場)では廃屋に遺されていた生活道具や、記憶の遺産などが展示され、鬼ヶ島をモチーフとしたフェルト製の模型や襖絵が設置されていた。
女木島を歩くと廃屋が多く点在することに否が応でも気付かされる。高松に最も近い島なのにこれほどの廃れぶりとは予想もしていなかった。離島、過疎、高齢化…瀬戸芸ではいろいろな現実も目に映る。
【高松港】
高松港に戻ると巨大な椰子の実を模したリン・シュンロン(林舜龍/台湾)の巨大なオブジェ「国境を越えて・海」が存在感を示す。瀬戸内と台湾を往還しながら現在漂流中で、内部に据える銅鑼の音がゴーン、ゴーンと港に響きわたる。
ことでん高松築港駅の脇に置かれたジュリアン・オピー(英国)の4体の石像「銀行家、看護師、探偵、弁護士」は各職業人が歩く姿をくり抜いた。ことでん、フェリー、JR高松駅を結ぶ歩道脇に設置され、連絡路にリズムとアクセントをつけてくれ、歩くことが思わず楽しくなる。