文化の薫りを放ち新人育成を続けて半世紀
「自分でもこんなに長くやるとは思いもしませんでした」。画廊でもやろうか、と姉に声を掛けられ、何もわからず始めてから「あっという間の50年」。文化薫る街に灯をと、半世紀を画廊に捧げてきた。
群馬県前橋市の呉服商の家に生まれ、父は書画骨董を愛する蒐集家。酒井抱一などのコレクションを有し、季節毎に絵を掛け変えるなど、芸術的環境に囲まれて育つ。そして日本女子大に進み住居学を専攻、卒業後は東大病院の改革に建築分野で貢献する。しかしライフワークとなるような仕事をしたいと考えていた時期に姉からの誘い。親戚に当たる同郷の画家・山口薫からの応援も心強かった。
1962年神田駿河台に「スルガ台画廊」を創設、65年春から1年間パリにて美術修業、画廊・美術館を連日見て廻った。その成果がレスポワール展L’espoir(希望、期待)となり、毎年前半は新人選抜個展を開催。同展から育った作家が人気作家となり、更にその教え子たちが発表を行なう。新人育成が画廊の特徴として定着した。姉との共同経営も70年代半ばからは一人で切り盛りし、81年銀座6丁目に移転、「銀座スルガ台画廊」として現在に至る。
「画廊は子どもみたいな存在、これからも微力ながら若い人を応援して行きたい」。画廊ゆかりの作家、若手俊英作家による50周年記念小品展の第2弾(日本画32名/2012・11・26~12・1)が開かれる。
「新美術新聞」2012年11月11日号(第1296号)1面より