人間と自然とのかかわりを問う
今瀨佐和 (茨城県近代美術館学芸員)
この二年間は、各地の美術館で復興支援のための展覧会や、被災地での作家の活動記録をテーマとした展覧会が開かれてきました。そんななか茨城県近代美術館では、東日本大震災以前私たちが自然について考えていたことはその後の二年間に大幅に再考を求められているのではないか、という思いからこの展覧会を企画しました。
人間が陸の上で住める場所は僅かであり、その外側に拡がる自然界は自然自体のバランスによって常に動き続けていて、時として人間にとっては逃げることができない巨大な破壊力となって迫ってくる、そのことを私達は二年前の東日本大震災において実感しましたが、自然と向かいあう芸術家の中には、深い思索と観察により他の人が見過ごしがちなそうした自然の本質に迫り作品を作ってきた人もいます。本展では石をモデルに木彫で石の姿を表し、なぜこの作品を作ったのかという疑問から自然について考えさせる橋本平八「石に就て(附 原石)」(1928年)のように直接震災には関わりがない作品も含めて展示し、人間と自然とのかかわりを問います。
実際に震災と関わりのある作品としては、第10回再興院展に出品され、初日の9月1日に関東大震災に遭遇した横山大観「生々流転」(重要文化財、1923年 東京国立近代美術館蔵)や、牧島如鳩の「魚籠観音像」(1952年 足利市民文化財団蔵)などを展示します。「魚籃観音像」は、如鳩が福島県小名浜滞在中に大漁祈願のために描き、「絵を動かすと不漁になるから」と長年小名浜の漁業協同組合から動かされることがなかったものの、展覧会の関係でたまたま小名浜を離れていたために東日本大震災に遭遇しなかった作品です。
さらに現代美術のインスタレーションとして河口龍夫が東日本大震災の発生以前に発表した作品を用いながら震災発生以前と発生以後の関係を問う「関係-無関係・椅子との間」(2012年)「関係・無関係・弾けないピアノ」(2012年)を、また中西夏之が津波により流失した岡倉天心の六角堂に関わる「着陸と着水ⅩⅣ 五浦海岸」(2013年)を発表するなど、絵画、彫刻から写真やインスタレーションにまで範囲を拡げて構成します。
出品作家:
小川芋銭、横山大観、木村武山、萬鐡五郎、中村彝、十亀広太郎、牧島如鳩、橋本平八、中西夏之、河口龍夫、エミコ・サワラギ・ギルバート、井上直、野沢二郎、楢橋朝子、間島秀徳、米田知子
【会期】 2013年2月5日(火)~3月20日(水・祝)
【会場】 茨城県近代美術館(茨城県水戸市千波町東久保666-1)
☎029-243-5111
【休館】 2月12日(火)、18日(月)
【開館時間】 9:30~17:00(入館は閉館30分前まで)
【料金】 一般950円 高大生700円 小中生350円
【関連リンク】 茨城県近代美術館 公式ホームページ
シンポジウム「二年後。今、私たちはどこにいるのか」
2013年3月10日(日) 13:30~
【パネリスト】 河口龍夫(出品作家)、北澤憲昭(女子美術大学教授)、小泉晋弥(茨城大学大学院教授)、市川政憲(同館館長)
【会場】 同館地階講堂
※ 入場無料、定員250名
「新美術新聞」2013年2月11日号(第1303号)1面より
〈招待券プレゼント〉
同展の招待券を、5組10名様にプレゼントいたします。
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締切 2月20日必着
※応募多数の際は抽選とさせていただきます。なお当選者の発表は、発送をもってかえさせていただきます。