[ときの人] 真室佳武さん 東京都美術館館長

2012年07月19日 19:52 カテゴリ:コラム

 

撮影:川島保彦

美術の未来へ、懸け橋となるために

 

 

4月1日、東京都美術館が2年間の改修工事を終えてリニューアルオープンを迎えた。目印の赤茶のタイルも鮮やかに、ショップは広く、レストラン・カフェは3店舗に拡大。スタッフが常駐するアートラウンジは、美術情報の宝庫となる。

 

「最大のミッションは『アートへの入口』となることです」。そう話すのは館長の真室佳武さん。年間200万人が来館する国内有数の大型館は「人と美術が出会う、心のゆたかさの拠り所」を目指す。

 

都美館に勤め四半世紀。館長として95年からその歴史を見てきた。もともと上野の土地に縁が深い。東京藝術大学で18世紀フランス美術を専攻し、のちにパリ大学へ留学。研究とともに、カッパドキア学術調査へ参加し、故・平山郁夫氏らと洞窟壁画を調査した。群馬県立近代美術館につとめ、ふたたび上野へ帰るのは86年のことだ。

 

財源確保など、美術館に求められるものは時代とともに変化する。だが、変わらぬ役割がある。「コレクションは、一時的に幸いにも“預かっている”と表現するコレクターがいます。それは美術館も同じ。伝統や文化を未来へつなぐ使命があります」。こうして前川國男設計の躯体ものこされた。

 

海外の名作来日に尽力し、公募団体展の活性化も思案する。美術ファン、美術家たちとともに歩むその先に、理想とする美術館像を見すえる。

 

「新美術新聞」2012年4月11日(第1277号)1面より

 

 

 


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