第81回独立展(10月16日~28日)について、事務所委員というお立場からお聞かせください。
絹谷 昨年、独立展は80周年を迎え、新しい一歩を踏み出したところです。美術界の長い歩みの中、戦前・戦後を通じて、ヨーロッパの新しい気風を取り入れながらわが国独自の本格的な油画を確立するために、「独立」の旗の下、独立独歩で頑張ってきました。独立美術協会は理事長などの役職がありません。会員になれば即審査員と、非常に運営は民主的です。ですから新進気鋭も重鎮と言われる方も審査では同じく一票の票数しかなく、110人ぐらいが一度に審査します。作家魂がぶつかり合う、情熱に満ちあふれた会なのです。そんな中で切磋琢磨し、この81回展を今年迎えたわけです。
毎年の展覧会場でも、その熱気が感じられます。
絹谷 そうですね。進取の気性をもって、皆さんが作品に取り組んでおられます。新しい日本を創造していくという気持ちもあるかもしれません。そして、見に来られる方や、いつも独立展を気にかけて下さっている方々へは、新しい大海へ漕ぎ出す船の切っ先のような役目を、画壇の中で担ってきたと思います。非常に熱気があふれ、毎年会場はムンムンとするような雰囲気で、活気あふれる力作がそろう。どうぞ今年も皆さんにご覧いただきたいと思います。
独立展といえば、林武、野口弥太郎、海老原喜之助、鳥海青児といった大スターの作家たちが、今に至る草創期を支えたと記憶されます。
絹谷 私も東京藝術大学へ入りたいというよりも、林武先生に学びたくて入学したわけです。そういった先生方が、会をグイグイと引っぱって下さっていた。その後塵を拝しているわけです。私どもも創立時の熱気に負けないように心身を鍛え、絵に打ち込んでいく。その姿勢は創立以来変わっていませんね。流行に押されることなく、他を真似することなく、日本独特の、あるいは個人の感性を鋭く磨いていくのが会の特徴です。
80周年のときには、その3年前から「ホップ・ステップ・ジャンプ」というように準備を進めていました。90周年に向けていかがでしょうか。
絹谷 7年後の2020年には、オリンピックが東京で開かれます。実は近代オリンピックの創始者・クーベルタン男爵は「芸術とスポーツの祭典」と言っています。ですから独立展のみならず、音楽も演劇も、皆で芸術文化に貢献する一翼を担っていきたい。私たちの故郷のさらなる幸せのためにも、邁進したいと思っております。
大学での教鞭はもとより、広く教育普及へ力を入れていらっしゃると感じます。
絹谷 日本藝術院と文化庁が行っている社会貢献活動の「子ども 夢・アート・アカデミー」というものがあります。全国の様々な学校から希望が届きボランティアで訪問するものです。一昨年は37校、今年は個展などで大変忙しく27校ぐらいしか行けませんでした。自分にしても独立展にしても、会を育て、若い芸術家を育てなければいけません。あるいは、芸術家だけでなく、広く子ども達に、絵を描くことは楽しいのだと教えておきたい。その気持ちは何かの機会に役に立つのではないかと思っています。それとともに、画家は自分自身の絵を描かなければいけません。
これから独立展出品を目指す方々へ、一言お願いします。
絹谷 日本という故郷の伝統を踏まえながらも、それにおもねることなく、新しい創造の翼を広げていくということが、創立以来の会の考え方です。その心がまえを、各会員、準会員、出品者の方々皆がもっている。ぜひ、私たちの最新作をご覧いただきたいと思います。そして次の100周年を目指し、皆さんと一丸になって頑張りたいと思っております。
【関連リンク】 独立美術協会
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「新美術新聞」2013年10月11日号(第1325号)2面より