姫路市立美術館開館30周年記念・神戸新聞創刊115周年記念
海の見える杜美術館所蔵
世界最大級の広重・花鳥画コレクション一挙公開
平瀬礼太(姫路市立美術館学芸員)
姫路市立美術館開館30周年を記念して「広重展」を開催いたします。
江戸の火消同心の安藤家に生まれた広重は、後に西洋画を含めた多彩なスタイルをとりいれて幅広い画風を展開した浮世絵師です。歌川豊広に師事して歌川の姓を名乗ることとなった広重は、はじめは美人画を多く描きますが、葛飾北斎の風景版画に刺激を受けて「東海道五拾三次」をはじめとする風景版画を発表、四季の風情を巧みにとりいれた旅情溢れる作風で一世を風靡します。
さらに広重は花鳥を主題とした浮世絵に取り組みます。多くは幕末の天保(1830~44)年間に制作されたそれらの花鳥版画において広重は、近代的な写実性をベースにしながらも柔和な雰囲気を漂わせる独自の世界を演出します。大胆でありながら繊細に気配りされた画面構成の見事さはもちろんのこと、画中に俳句や短歌、詩を添えてそれらの詩句とともに画を観賞させることにより、より味わい深い情趣を生み出すことに成功しました。詩情溢れる広重の花鳥版画は多くの庶民を魅了し、風景版画のみでなく、花鳥版画の第一人者としての広重の地位を揺るぎないものとしました。最終的には全浮世絵師の中でも随一の量の花鳥版画を残すことになるほど、広重の描く花鳥の世界は多くの人々に愛好されたのです。
本展では広島県廿日市市にある海の見える杜美術館の豊富な浮世絵コレクションの中から、世界最大規模の所蔵を誇る広重花鳥画約220点を選び紹介いたします。切手ファンなら知らない人はいないほど有名な「月に雁」をはじめとした季節感豊かで多彩な花鳥画に加え、生き生きとした魚介を活写する「魚づくし」のシリーズは、広重の風景画とは異なる興趣と筆の冴えを見せています。
加えて広重の東都名所シリーズをはじめとする名所絵や、明治期から昭和期にかけて活躍し、国外で人気を博している小原古邨の花鳥画も合わせて総数約270点の木版画の粋を一堂に展示します。
広重の花鳥画がこれだけまとまって紹介されることは、世界的にも稀有のことです。この貴重な機会に、是非日本を代表する浮世絵師・広重の新たな魅力を発見していただきたいと思います。
【会期】 2013年11月2日(土)~12月15日(日)
【会場】 姫路市立美術館(兵庫県姫路市本町68―25)☎079―222―2288
【休館】 月曜(11月4日は開館)、11月5日(火)
【開館時間】 10:00~17:00(入場は閉館30分前まで)
【料金】 一般1000円 大学・高校生600円 中学・小学生200円
【関連リンク】 姫路市立美術館
【関連記事】 青山熊治展 エミール・クラウスとベルギーの印象派
記念講演会
「広重の画業-花鳥画を中心に」
【日時】 2013年11月24日(日) 14:00~
【講師】 浅野秀剛氏(大和文華館館長)
「広重の風景画」
【日時】 2013年12月1日(日) 14:00~
【講師】 小林忠氏(国際浮世絵学会理事長、学習院大学名誉教授)
※ともに事前申込が必要。往復ハガキか、美術館のホームページより、イベント申込フォームを利用のこと。締切は11月8日(金)消印有効。