光溢れる明快な色彩に伸びやかなタッチ、人物画を中心に卓抜した構成による具象世界を描出し、現代洋画壇を代表する作家の一人として知られる今井信吾(1938年兵庫県生まれ、独立美術協会会員、多摩美術大学名誉教授)。
東京藝術大学で林武、同大学院で山口薫に師事。1963年の第31回独立展に初出品し、1967年「マジョリ」、「ネバ・モア」で独立賞を受賞した。その後は独立展を中心に発表を重ね、独立美術協会の中核作家によるグループ展「十果会」にも1994年より出品を続ける。一方で、1970年から2009年までの長きにわたって多摩美術大学で教鞭を執り、後進の育成に注力。退官後もカルチャースクールなどの講師として、美術教育の場に身を置き続けている。
その作品においては、裸婦や2人の娘を画面の主な構成要素とし、特に学生の時から探究し続けてきた裸婦は今井のライフワークと言えるもの。「形について、色彩について、それを取り巻く空間について、たえず自分の作画態度に反省を強いるモチーフであり、めったにないけれども、気持ちよく仕事できたときの手ごたえも強い、はねかえってくるものがある」と40歳の頃に述べているが、その考えは現在においてもなお変わらぬものであろう。
今展は、恒例となっている銀座井上画廊でのドローイング展。日々の取材やカルチャースクールで生徒ともに描いた膨大なドローイング、スケッチの中から、作家自らが精選した作品を展示する。一見無造作に、素早く走る線は巧みに対象を写しとり、豊かな空間を構成する。50年におよぶ画業を通じて描き続ける、その蓄積から生み出された躍動する描線に、洋画家・今井信吾の真髄を見ることが出来るはずだ。裸婦を中心に、国内外の風景を織り交ぜたドローイングやデッサン、油彩のサムホールを展示する。
【会期】 2014年5月19日(月)~24日(土)
【会場】 銀座 井上画廊 (東京都中央区銀座3-5-6 井上商会ビル3F)
☎03―3562-1911
【休廊】 会期中無休
【開廊時間】 11:00~19:00 (初日は13:00より、最終日は18:00まで)
【料金】 無料
「新美術新聞」2014年5月21日号(第1344号)1面より