日本画はいかにして「現代化」されたのか
山田諭(名古屋市美術館学芸員)
「挑戦する日本画」という唐突な展覧会タイトルを見て、「いったい何に挑戦するのか?」と戸惑われたのではないだろうか。このような疑問に対する答えとして、ポスターには、「日本画滅亡論」を超えて―という言葉を添えておいた。
すなわち、太平洋戦争に敗北した後の日本社会において、「日本画滅亡論」が語られるほど、その存続が危ぶまれる状況のなかで、日本画を革新しようと「挑戦する」画家たちが制作した作品を、二一世紀の現在から見直すという企画意図を、何とか説明できないかと考えたのである。
最初に設定した展覧会のテーマは、日本画はいかにして「現代化」されたのか―というものであり、そのまま展覧会タイトルにしようと考えたこともあったが、最終的に「挑戦する日本画―一九五〇~七〇年代の画家たち」に落着したのである。
さて、それでは実際に、日本画はいかにして「現代化」されたのであろうか。出品画家五〇名の作品七八点をご覧いただくと、おそらく予想以上に極めて多様多彩であったことに驚嘆されるに違いない。
日展の大御所である福田平八郎の理知的な風景や徳岡神泉の神韻たる風景から、堂本印象の抽象絵画、「日展三山」と称された東山魁夷、杉山寧、髙山辰雄の重厚な構成による「日展スタイル」の作品群。再興院展の岩橋英遠の大自然のスペクタクルな風景や片岡球子の大胆不敵な表現による肖像、平山郁夫のシルクロード遺跡の荒涼たる風景。青龍社の横山操による東京オリンピックに備えた高速道路の建設現場を描いた超大作。創造美術の福田豊四郎の愛する故郷の素朴な聖母子像、広田多津の強かに逞しい裸婦や加山又造による現代のトップ・モデルの研ぎ澄まされた裸体。前衛的なパンリアル美術協会の三上誠や星野眞吾、ケラ美術協会の岩田重義の多様な物体をコラージュ構成した作品群。「これが日本画だ!」と壮語する中村正義や水谷勇夫の社会性のある作品。そして、日本画を出自とする現代美術家である桑山忠明と李禹煥の作品まで。
まさに老大家から前衛作家まで、激動する戦後社会の現実に対峙して、ヨーロッパ美術から影響を受けながら、新しい日本画が課題とするべきテーマを模索するとともに、斬新な表現方法や作品形式を開拓して、時代遅れと非難された日本画を「現代化」することに取り組んだのである。
誰が日本画の「現代化」に最も成功したのか―。それを決めるのは、展覧会を見た「あなた」である。
【会期】 2014年7月5日(土)~8月24日(日)
【会場】 名古屋市美術館(名古屋市中区栄2―17―25)☎052―212―0001
【休館】 月曜、7月22日、ただし7月21日開館
【開館時間】 9:30~17:00(金曜のみ20:00まで、入場は閉館30分前まで)
【料金】 一般1200円 高大生700円 小中生無料
【関連リンク】 名古屋市美術館
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【講師】 山田諭・名古屋市美術館学芸員
【会場】 名古屋市美術館・講堂
【料金】 無料、定員180名、先着順
「新美術新聞」2014年7月1日号(第1348号)1面より