新館建設含む将来構想策定 整備事業に1億2千万円予算
門川京都市長 「新館建設 本館の再整備 アメニティ充実等」表明
京都市美術館(潮江宏三館長)は、昨年開館80周年を迎えた。京都市では今後とも国内外の多くの人々を魅了する美術館像を求め、同市美術館評議員会からの答申や市民意見募集の結果を踏まえ、今春までに「京都市美術館将来構想」を策定した。その運営に関する事項を調査・審議する京都市美術館評議員会が、門川大作市長も出席のうえ6月25日、同美術館で開かれた。新館建設を含む平成26年度再整備事業のスケジュールが徐々に具体化する見通しだ。
この日の評議員会には、市長はじめ潮江館長、市担当部局関係者らと次の評議員会委員8氏が出席した。梶谷宣子(染織美術評論家)、春日井路子(工芸染織家・日本現代工芸美術家協会評議員)、加藤類子(美術評論家)、小清水漸(彫刻家)、小谷眞由美((株)ユーシン精機社長)、建畠晢(京都市立芸術大学学長)、仲間裕子(立命館大学教授・アジア芸術学会評価委員・民族芸術学会理事)、柳原正樹(京都国立近代美術館館長)。=50音順・敬称略
議事に先立ち今年4月5日に急逝した内山武夫氏(前京都市美術館評議員会議長、元京都国立近代美術館館長)の多大な業績と人柄を偲び、出席者達により1分間の黙祷が捧げられた。
冒頭、門川市長は「評議員会『検討委員会』そして市民皆様のご意見も加わって将来構想が策定され、明確な方向性が打ち出されました。常設展と現代の作品の展示、アメニティ施設の充実、大学や教育機関との連携強化などについて、しっかりと未来を見据えて取り組んでいきたい。財政が厳しいとき全国的にも安全安心が優先し、福祉が最優先の風潮ですが、京都が京都であり続けるために、文化芸術をいかに大事にしなければならないかを強調しておきたい。この重要文化財級の美術館の建物の価値を残しながら機動性を高めていくスペースの拡充すること。動物園や京都会館など様々な施設が集積する岡﨑公園一帯は文化ゾーンであり、その中心が当美術館です。来年は京都国際現代芸術祭が開かれそして琳派四百年展、さらに2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。スポーツも大事ですが、同時に日本の文化を世界に向けて発信することも極めて大切です。そこで京都が大きな役割を果たしていく、これは大きなチャンスです」などと挨拶した。
潮江館長からは平成25年度事業報告が行われ、「80周年となった昨年は『市展・京展物語』『2013京展』など4つの主催展と『ゴッホ展 空白のパリを追う』『竹内栖鳳展 近代日本画の巨人』など5つの共催展が開かれ、例年以上の賑やかさだった。年間100万人前後が入場する大規模美術館としては、これまで必ずしも十分ではない現実を、内実ともに充実する形にするにはどうすればよいかをご提案頂きました。これを基に少しずつ積み上げながら進めたい」と語った。
美術館将来構想の概要について、市側から「未来に向けて歴史を紡いでいく」、「幅広い世代の人々が集う」美術館など目指すべき方向性4項目が示された。施設の課題と求められる整備については、建設から80年が経ち老朽化が著しいほか、施設環境や設備も今日的なニーズに応えられるものとなっていないとし、特に挙げられた課題が美術館機能で常設展示室、現代美術展示室の整備、収蔵庫の拡充等。来館者サービスではミュージアムショップ、カフェ、レストランの整備等。同じ公立美術館の東京都美術館、横浜美術館、兵庫県立美術館と比べても京都市美のアメニティ施設はいずれも未整備との現状報告がある。
京都市の財政状況は相当厳しい。そうした中で京都市は、将来構想に基づいた平成26年度の再整備事業で予算1億2千3百万円を計上、構想を具体化していくための基本計画の策定、近辺の埋蔵文化財の調査に取り組むことになった。高い建物は難しく、地下に展示スペースを確保する方向だ。今年策定する中で新館スペースの設計者・工事業者選定の方式を別々でなくセットにするとかの再整備スケジュールについて年内にも素案をまとめるという。
「新美術新聞」2014年7月21日号(第1350号)3面より