銅版画コラージュ、ミクストメディア、油彩と、数種の技法や素材を駆使する。時に銅版画の領域を越境しながら、動物、植物、人物を色彩豊かな表現で組合わせ、新たな視点を発信し続けてきた。
この間、国内の公募展や個展のほか、海外のアートフェアなどにも参加し、グローバルな意識が醸成されてきた。「プロのアーティストであれ」といった意識の芽生えである。作品や日常への変化を求め研修先に選んだ国はフランス。パリにあるアトリエ・コントルポアンという銅版画専門の工房で一版多色刷技法を学んだ。周囲は多国籍のアーティストで、パリが人種の坩堝であることも実感させられた。
最初の2、3カ月は基礎の彫り、腐食、その後、色刷りの工程へと進み、最後に自由制作が許された。「多様な作品を目の当たりにし、価値観や生活習慣も異なるなかで、アーティストとしての感性が、同じ時間を過ごすなかで大きな刺激になった」。焦らず自らのペースで物事に取り組む姿勢が養われた、と強調する。
今展には、帰国後の個展で披露した六曲一隻屏風「Le Petit Cardinal」が展示の中央に配置されている。画面の左には、フランスで出会った子供や宿泊先のアパートからの風景、右には富士山や浮世絵を想起する登場人物が、時空を超えた絵巻のように展開する。「作品の中に様々な仕掛けを置いて、見る方に楽しんでもらいたい。色彩に新たな空気が加わったことが作品としての成果」と話す。
埼玉県朝霞市にある丸沼芸術の森にアトリエを構え、気が付けば大学院を修了して10年の歳月が流れた。アトリエのオーナーや両親の後押で、ここまで歩んでこられたと感謝の思いを口にする。同時に、「5年先を見据えよりグローバルに海外へ発表の場を拡げたい」と胎動も始まっている。