[画材考] 川内真梨子: 幻の技法を次の世まで繋ぎたい

2015年03月29日 10:00 カテゴリ:エッセイ

 

幻の技法を次の世まで繋ぎたい

 

「FLOWERS」53.0×53.1cm

 

私は自身の日本画制作に截金(きりかね)を用います。截金は箔そのものが光の如く輝くため、日本における芸術作品(特に宗教作品)には格別に扱われてきた伝統技法で、その起源から隆盛、衰退は常に仏教とともにあり、13世紀頃隆盛を極めた後は、幻の技法と言われるまでに希少なものとなります。

 

その工程はまず、熱した炭に灰をかぶせ、そこで何枚にも重ね焼き合わせた箔を鹿皮の箔台に置き、竹刀にて細く切り、それを筆にとって、膠とふのりを混ぜたのりで貼り荘厳するというものです。

 

私は幸運にも京都造形芸術大学3回生の時に故江里佐代子先生より指導を受け、初めて截金という存在とその技術の素晴らしさに出会うことができました。もともと住いが京都と奈良の間で歴史深く、青春時代は父の博学に感化されて勉学と寺社仏閣まみれでしたので、截金と出会い、ようやく志を具現化できる手立てが見つかったような感覚を抱きました。

 

 

そこから技法の魅力にのめりこみ、気が付けば十年。とにかく工程の一つ一つに毎日違う発見があり、湿度や気温でも感触が違うので面白い。夢中になるあまり、道の途中では頻繁に身体を壊しました。画業においては変な話かもしれませんが、この技は心技体のどれが欠けても成し得ないと感じています。

 

まだまだ歩み始めたばかりの作家人生に截金があることに感謝し、遙かな世から繋がれた一本の線を、わたしもまた次の世に引き継ぐべく今日もまた技をみがいていきたいです。

 

 

川内真梨子 (かわうち・まりこ)

日本画家。

 

今後の予定に、2015年4月30日~5月2日「京宵展」出品(京都美術倶楽部)。

 

 

 

 

 

 

 

 

【関連リンク】京都美術倶楽部

 


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