札幌に生まれ、全国に数多くのモニュメントを制作した彫刻家・本郷新(1905~80)の功績を記念して2013年より新たに始まった「本郷新記念札幌彫刻賞」(主催・札幌市、本郷新記念札幌彫刻美術館)の第2回募集が開始された。
前身である「本郷新賞」が全国の優れたパブリックアートへ贈られたのに対して、本賞は若手作家の育成を願った本郷の遺志を受けて50歳未満の若手彫刻家を対象とし、受賞作品(1点)を札幌市中心部、1日約7万人が往来する「大通交流拠点地下広場」に約3年間設置(2018年2月~2012年1月予定)。同時に本郷新記念札幌彫刻美術館にて受賞作家の個展が開催される。第1回は、ドイツ・ベルリンと札幌を拠点に、壁や道路などの破損した箇所(=凹み)の形状をモチーフとした彫刻作品の制作を続ける谷口顕一郎《凹みスタディ―琴似川北12条西20丁目―》が受賞した。
第2回募集に関して、同館館長で選考委員を務める寺嶋弘道氏は以下のように寄せてくれている。
公園や広場や通路など公共の空間には、その場、その時代にふさわしいパブリック・アートの姿がある。だが、この“ふさわしい”という言葉ほど、一人ひとりの考えが微妙に異なり、判断が分かれる言い方はないだろう。この微妙に難しいパブリック・アートに対する提案を競い合い、最優秀作品を実際に3年間設置してみようというのが、札幌彫刻賞である。
本賞が公募する作品の設置場所は世に知れた大通公園の真下、一日5万人の人びとが行き来する地下歩行空間と、一日7万人の乗降客が利用する地下鉄大通駅が接続する公共の地下空間である。たくさんの眼が作品に注がれることだろう。さらにこの場所は、一方に壁面を背負いつつ、公園から地下に下る回り階段の、その円弧の中心に作品は据付けられる。作品にはさまざまな角度から視線が注がれることだろう。
明治の文明開化からおよそ150年、戦後もすでに70年を越えた。彫刻という表現が西洋から日本に移入され今日に至るまで、さまざまな美術潮流の中で彫刻は作られ続けてきた。まして現代は時代的にも社会的にも、さらに個人の生き方のうえでもさまざまな課題や困難が山積している。そのような時代状況において、パブリックとは何か、アートとは何か、それを競い合い、往来を行き交うたくさんの人びとに訴えかけるのである。
公衆の視線にさらされるこの難しい場所、この難しい時代に“ふさわしい”作品の、多数の応募を期待したい。
募集の概要は以下。
【応募資格】
・国内在住で2017年1月31日時点で50歳未満の者。
・国籍、個人・グループは問わない。
【申込締切】
2017年1月31日(火)
【応募料】
10,000円(1点につき)
【賞・賞金】
・本郷新記念札幌彫刻賞(100万円)
・受賞記念展作品制作費(50万円)
【審査員】※順不同、敬称略
・酒井忠康(世田谷美術館館長)
・建畠 晢(多摩美術大学学長)
・植松奎二(彫刻家)
・阿部典英(美術家)
・佐藤友哉(札幌芸術の森美術館館長)
・寺嶋弘道(本郷新記念札幌彫刻美術館館長)
【受賞記念展】
2018年4月~6月 本郷新記念札幌彫刻美術館(札幌市中央区宮の森4条12)
【詳細・問合せ】
本郷新記念札幌彫刻美術館