「ミュシャ」65万人「草間彌生」52万人―国立新美術館の開館10周年記念展が2TOP
〝ミュシャ〟と〝草間〟。両展に117万人がつめかけた2017年上半期。全国で開催された大型企画展を入場者数から振り返る。1月~6月に開催された展覧会を、主催する全国の美術館、新聞社、テレビ局を主な対象に調査。印象派でも海外有名美術館展でもない2人の個展に50万人以上がつめかけ、会場には若者の姿も目立つなど、美術ファン以外も強くひきつけたようだ。
展覧会名 会期 会場 主催 入場者数 1日平均 1 3/8~6/5(79) 国立新美術館 657,350 8,321 2 2/22~5/22(80) 国立新美術館 518,893 6,486 3 4/18~7/2(67) 東京都美術館 379,527 5,665 4 3/18~6/11(78) 国立科学博物館 327,579 4,200 5 2/4~6/11(128) 森美術館 300,043 2,344 6 16/10/7~1/21(75) 上野の森美術館 269,082 3,588 7 16/11/1~2/19(94) 国立科学博物館 265,082 2,820 8 16/10/8~3/20(134) 金沢21世紀美術館 248,235 1,853 9 4/11~6/4(49) 東京国立博物館 245,795 5,016 10 1/3~3/20(67) 愛知県美術館 225,041 3,359 11 2/10~5/28(95) 国立西洋美術館 219,150 2,307 12 9/13~1/9(96) 東京国立博物館 212,144 2,210 13 1/17~3/12(48) 東京国立博物館 209,572 4,366 14 3/18~6/18(92) 森アーツセンターギャラリー 201,494 2,190 15 4/11~5/21(36) 京都国立博物館 164,900 4,581 16 1/21~4/2(63) 東京都美術館 164,332 2,608 17 4/8~9/24(153) 日本科学未来館 152,010 2,141 18 4/8~7/9(82) 金沢21世紀美術館 150,990 1,841 19 16/11/23~1/29(56) 東京都江戸東京博物館 140,134 2,502 20 16/12/17~2/12(57) Bunkamura ザ・ミュージアム 136,572 2,3962017年前半展覧会入場者数BEST20
入場者数
ミュシャ展 国立新美術館、プラハ市、プラハ市立美術館、 NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
草間彌生 わが永遠の魂
国立新美術館、朝日新聞社、テレビ朝日
ブリューゲル「バベルの塔」展
東京都美術館、朝日新聞社、TBS、BS朝日
大英自然史博物館展
国立科学博物館、読売新聞社、BS日テレ
N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅
森美術館
※東京シティビューとの連動入場者数を記載
デトロイト美術館展
フジテレビジョン、産経新聞社、ぴあ、上野の森美術館
世界遺産 ラスコー展
国立科学博物館、毎日新聞社、TBS
工芸とデザインの境目
金沢21世紀美術館
茶の湯
東京国立博物館、NHK、NHKプロモーション、毎日新聞社
ゴッホとゴーギャン展
愛知県美術館、中日新聞社、CBCテレビ
スケーエン:デンマークの芸術家村
国立西洋美術館、スケーエン美術館、東京新聞
※常設展の入場者数を記載
平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち
東京国立博物館、櫟野寺、読売新聞社
春日大社 千年の至宝
他東京国立博物館、春日大社、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
大エルミタージュ美術館展
エルミタージュ美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、BS日テレ、
森アーツセンター
海北友松
京都国立博物館、毎日新聞社、NHK京都放送局、NHKプラネット近畿
ティツィアーノとヴェネツィア派展
東京都美術館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
ディズニー・アート展 いのちを吹き込む魔法
日本科学未来館、日本テレビ放送網、読売新聞社、WOWOW
※6月28日までの入場者数を記載
池田学展 The Pen ー凝縮の宇宙ー
金沢21世紀美術館、朝日新聞社
戦国時代展-A Century of Dreams-
東京都江戸東京博物館、読売新聞社、日本テレビ放送網、BS日テレ、日本写真印刷
マリメッコ展
Bunkamura、フィンランド・デザイン・ミュージアム、朝日新聞社
●調査対象:主に2017年前半に開かれた大型展覧会を任意で抽出し、開催館と主催メディアにアンケートを送付。41件の返答があった。 ●入場者数:基本的に主催館発表による。 ●会期:カッコ内は開催日数。 ●展覧会タイトルは一部省略をしているものあり。
2000年以降の「新美術新聞」入場者数調査において、個展・回顧展で50万人をこす展覧会は多くない。出品点数がわずかでも大型動員となるフェルメール、ダ・ヴィンチなどをのぞくと、05年「ゴッホ展」約52万人(東京国立近代美術館)、13年「ラファエロ」約51万人(国立西洋美術館)、15年「モネ展」約76万人(東京都美術館)、16年「ルノワール展」約67万人(国立新美術館)など、認知度抜群の巨匠が並ぶ。一例ながら、04年の「草間彌生展」(森美術館)は、展望台との共通券ながら52万人を記録した。
■巨大展示室はインスタ向け?
「ミュシャ展」「草間展」の共通項をあえてあげれば、展示作品・展示空間が非常に巨大な、巡回展のない単館での個展であったことだろう。「ミュシャ展」の6×8mにもなる「スラヴ叙事詩」連作は、開催館の展示で過去最高といった声が聞かれ、大作ゆえ混雑時でも見渡せることも奏功したようだ。「草間展」でも約130点が壁面を埋める展示室が冒頭に。そこは一部撮影可能だったため、同様の「ミュシャ展」とともに、会場風景がインスタグラムなどネット上に多く投稿された。美術展の「口コミ」も、時代と対応しつつある。
■レジ待ち最大80分
「草間展」の話題のひとつは、同展ショップのレジ待ち列。国立新美術館によると、草間展のレジ待ちは最大約80分(約280名、5月14日)。会場の入場待ちが最大約70分(約1300名、同21日)と、グッズ人気は非常に高い。一方では、「ミュシャ展」は期間をとおして入場者数に対し待ち時間がおさえられたのが特徴。待ち列が長くなったのは会期終了間際で、入場待ちは最大150分(約3750名、6月4日)、ショップのレジ待ちも最大約70分(約350名、同日)であった。同館では事前に、出来るだけ来館者が館内で並べるよう計画。館外に伸びることも想定し、共催者の協力のもとで給水所を設置した。会期末には救護室に看護師が常駐。不測の事態に備えたという。館の公式アカウントでは混雑状況をツイッターで発信し、混雑の分散・緩和に努めた。117万人は地道な取組みの成果でもあった。
■6作品でも4万6千人
細ペンから壮大にして緻密な作品を描く池田学(1973年生まれ)の個展は、郷里の佐賀県立美術館で95,740人、巡回先の金沢では15万人を記録。常設展入場者数ではあるが、国立西洋美術館の「スケーエン:デンマークの芸術家村」は219,150人(ほぼ同会期の「シャセリオー展」は約13万人で21位)。刀剣ブームもあってか、「戦国時代展」(江戸東京博物館)は約14万人。大阪市立東洋陶磁美術館の「台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆」は、展示作品6点ながら46,259人を記録。〝良い作品〟は展示規模によらず強い。
【関連リンク】 【レポート】2016年展覧会入場者数BEST30