最近どうも「お友達展」が目立つ。6月と8月に本欄で紹介したカニンガムとダルボーフェンの展覧会は「お友達展」だった。
難しく言えば「文脈」展だが、作家の生き方や創造性の根源に迫る人間味のある視点が自然と観客にも伝わってくる。特にコラボを制作の原点としないまでも、コラボに積極的な作家の回顧には有効なテーマである。
現在ニューヨーク近代美術館で開催中の「友人達にかこまれたロバート・ラウシェンバーグ」展もそんな好企画だ(9/17まで)。
何より本展では、友達の輪を媒介に、通常の回顧展では省略されがちな作品も登場する。
たとえば写真。とくにサイ・トゥオンブリーや最初の妻スーザン・ワイルなどのスナップ的ポートレートは秀逸だし、1952~53年にトゥオンブリーと旅行したローマで撮影した風景は「写真は経済的な即席アトリエだ」と喝破した作家の言葉を裏付ける。
イタリア旅行を終えて帰った作家はフルテン通にスタジオを構える。ここがジョン・ケージやマース・カニンガム、レーチェル・ローゼンタール、ジャスパー・ジョーンズなど、多彩な芸術家のいわば溜り場になる。制作面では、ローマで始まった《個人的な箱》のオブジェの小品シリーズに続いて、近隣の路上やスタテン島から拾い集めた素材を使った《自然彫刻》が展開される。1953年にステーブル画廊で《白の絵画》や《黒の絵画》とともに展示されたときには、観者が動かして構成を変えることを意図していたというから、参加型作品の早い例となる。モノクローム絵画もふくめて現代美術の手法を50年代に総なめしていたと形容される作家の面目躍如だ。
その一方で、なんとラウシェンバーグがシルクスクリーン技法を1962年にウォーホルから学んでいたことを私は不明にして本展で初めて認識した。いや以前に何かで読んで知っていなければならないはずなのだが、解説パネルに加えてウォーホルが先輩作家にオマージュをささげたシルクスクリーンのカンバス作品《誉れ高き人々をたたえよう》と一緒に、ラウシェンバーグの63~64年の作品群が並んでいるのを見て、今回ようやくしっかりと頭に入った、というのが実情に近い。
ラウシェンバーグのコラボといえば、カニンガムのためのステージデザインに加えて、E.A.T.(アートとテクノロジーの実験)グループが有名だ。アラン・カプローやリチャード・セラたちが記入した入会勧誘のアンケートをふくめた文書資料も興味深いが、映像展示に工夫が凝らされている。E.A.T.の代表的なパフォーマンス《演劇とエンジニアリングの九夜》の展示は、壁のみならず、床にもスクリーンを設置してダイナミックな環境を演出する。それだけでなく、カニンガムとの協働で知られる映像作家のチャールズ・アトラスが本展のために制作した《九夜》の映像インスタレーションもあり注目された。
ただ80年代の一大事業ROCI(ラウシェンバーグ海外文化交流の略)における地元とのコラボへの目配りが希薄なのが残念だった。
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