美人画100年の系譜 美の継承―万葉日本画へ続く流れ:西田彩乃

2017年09月20日 13:22 カテゴリ:最新のニュース

 

 

奈良県立万葉文化館における154点の館蔵品「万葉日本画」は、開館当初に当代随一の画家に制作を依頼し、4500首余りある万葉歌の中から選んだ歌をモチーフに描かれた作品だ。視覚から『万葉集』に収録された歌の世界を楽しむことのできる、他に類を見ない作品となり、万葉文化館ではこの「万葉日本画」を核として、日本画を中心とした展覧会を開催してきた。

 

今秋、万葉文化館では「京都市美術館名品展 美人画100年の系譜 美の継承―万葉日本画へ続く流れ」と題し、京都市美術館所蔵の名品より、日本画の代表的な題材として描かれてきた「美人画」に焦点を当てた展覧会を開催することとなった。

 

会場では、美人画の誕生、文学・謡曲に生きる女性、少女礼讃、日常生活の中の女性、裸婦像と母子像、そして京の女といったテーマに沿って、まだ美人絵・女絵とよばれていた江戸期から、美人画が成立をみせる明治期をはじめに、戦前、戦後の京の画家が描いてきた多くの女性像が一堂に陳列されている。

 

その冒頭を飾る作品のひとつに、美人画というジャンルが定着する時期と同じ頃に頭角を現すこととなる上村松園の《人生の花》がある。婚礼へ向かう花嫁と、先導する母親の姿が描かれるこの作品は、婚礼の着付けなどを任される機会を得た松園が、その様子を克明に写生し描かれたもので、当時まだ残っていた京都の花嫁風俗を忠実に再現された作品となっている。

 

その他にも、西山翠嶂が手掛けた月の宮とされる《広寒宮》、唐の皇帝・玄宗と楊貴妃の物語を描いた橋本関雪の《長恨歌》といった歌や文学に観る女性像や、菊池契月《散策》の清らかな少女像、大陸の女性を捉えた前田青邨《観画》、土田麦僊《平牀》、裸体のフォルムを追求した広田多津の《裸婦》など、京都を代表する作家らの数々の名品が登場する。また本展では、そうした出品作家と関連の深い作家の万葉日本画を展示し、伝統的な日本画を継承してきた館蔵品作家の紹介も併せて行っている。

 

こうした美人画を楽しむとともに、描かれた女性たちの化粧や着物の柄などにも注目をして観ていただきたい。

 

(奈良県立万葉文化館学芸員)

 

出品作家(50音順)
秋野不矩、石川晴彦、石島良則、井上通世、植中直斎、上村松園、海老名正夫、大日躬世子、梶原緋佐子、勝田 哲、菊池契月、菊池隆志、北沢映月、小松 均、近藤浩一路、佐藤光華、田代正子、土田麦僊、堂本印象、西 綾女、西山翠嶂、丹羽阿樹子、橋本関雪、広田多津、不二木阿古、前田青邨、梥本一洋、三谷十糸子、三畠上龍、三宅凰白、三輪晁勢、三輪良平、由里本景子、吉原真龍

 

 

【展覧会】「特別展」京都市美術館名品展 美人画100年の系譜 美の継承―万葉日本画へ続く流れ

【会期】2017年9月2日(土)~10月15日(日)

【会場】奈良県立万葉文化館 日本画展示室(奈良県高市郡明日香村飛鳥10)

【TEL】0744-54-1850

【休館】月曜、祝日のとき翌日

【開館】10:00~17:30(入館は17:00まで)

【料金】一般1,000円 高校・大学生500円 小・中学生300円

 

【関連リンク】奈良県立万葉文化館

 


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