平成29年度文化勲章に洋画の奥谷 博氏、文化功労者に彫刻の雨宮敬子氏、現代美術家の杉本博司氏ら

2017年10月24日 16:03 カテゴリ:最新のニュース

 

平成29年度の文化勲章、文化功労者が10月24日に発表された。美術分野の文化勲章には、独立展を中心に活躍を続ける洋画の奥谷 博氏(83)ら5名が、文化功労者には、日展などで具象彫刻を発表する雨宮敬子氏(86)、大型カメラを用いた精緻な写真表現で知られる現代美術家の杉本博司氏(69)ら15名が決定した。(11月3日発令予定)

 

〈文化勲章〉 奥谷 博氏【洋画】

 

奥谷 博氏は1934年高知県宿毛市生まれ。東京藝術大学油画科在学中の58年に独立展に初入選。洋画家の林武に師事し、66年独立美術協会会員となる。67年第1回の文部省芸術家在外研修員として渡仏し、帰国後、愛知県立芸術大学助教授となるが、再渡仏のため退職。2度の渡欧を通じて、「日本人が描く油絵」を模索し薄塗りで鮮やかな色彩の対比を主調とする作風を確立した。96年日本藝術院賞を受賞し、同年、日本藝術院会員となる。2007年には世界各地の世界遺産を描いた作品による「世界遺産条約採択35周年記念 奥谷博展―訪ねた世界遺産」をパリのユネスコ本部で開催。同年、文化功労者として顕彰された。母校の東京藝術大学で客員教授を務めた経歴や日本美術家連盟では役員を歴任。現在、所属する独立美術協会の第85回記念独立展が六本木の国立新美術館(~10月30日)で、監修を務めた文化庁新進芸術家海外研修制度50周年記念展―美術部門―「洋画」「日本画」「版画」が愛媛・新居浜市美術館(~10月29日)、茨城県天心記念五浦美術館(12月2日~18年2月4日)、名古屋・松坂屋美術館(18年3月10日~4月8日)で開催。

 

奥谷 博氏のコメント
「この度は期せずして文化勲章の栄誉に浴し大変重みを感じておりますとともに、文化人の仲間入りが出来たことを嬉しく思っております。私の座右の銘であります『藝術無終』の言葉の通り、これからも終わりのない芸術の道を進んで参りたいと思っております」

 

その他、文化勲章には、雅楽の芝 祐靖氏、中国史の斯波義信氏、光化学・電気化学の藤嶋 昭氏、分子生物学の松原謙一氏が受章。文化勲章の受章者総数は399人(現存者75人)となった。文化勲章親授式は11月3日皇居で予定される。

 

 

〈文化功労者〉 雨宮敬子氏 【彫刻】

雨宮敬子氏は1931年東京生まれ。56年日本大学芸術学部美術学科彫刻科を卒業後、同年第12回日展に初入選。58年、63年と日展で特選を重ね、66年日展会員となる。69年から83年まで15回にわたり洋画の三岸節子、日本画の片岡球子ら女性作家による潮展を三越で開催。83年中原悌二郎賞優秀賞、85年日展内閣総理大臣賞を受賞。90年日本藝術院賞を受賞し、94年日本藝術院会員となる。日展や日彫展を中心に制作発表を重ね、着衣やヌードの女性像のほか、瑞々しい少女像やこども像で知られる。彫刻家の一家に育ち、父・雨宮治郎、弟・雨宮 淳は共に日本藝術院会員として活躍した。現在、日展顧問、日本彫刻会常務理事を務め、所属する日展の110周年記念「美の魁け―日展の現在―」展が銀座・和光ホールで開催されている(10月29日まで)。

 

〈文化功労者〉 杉本博司氏 【写真】

杉本博司氏は1948年東京都生まれ。立教大学卒業後の70年に渡米し、ロサンゼルスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで写真を専攻。74年からニューヨークを拠点に制作を開始。劇場や映画館を長時間露光で撮影した《劇場》シリーズ、自然史博物館のジオラマを撮った《ジオラマ》シリーズ、世界各地の海を同じ構図で写した《海景》シリーズを発表。コンセプチュアル・アートの系譜にも連なる成果として国際的に注目を集めた。ニューヨークのソナベントギャラリーをはじめ、東京の佐賀町エキジビット・スペースでの個展、昨年は東京都写真美術館のリニューアルオープン 総合開館20周年記念「杉本博司ロスト・ヒューマン」展など国内外で多数の展覧会を開催している。2001年ハッセルブラッド国際写真賞、09年高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)、14年イサム・ノグチ賞などを受賞。近年は文化財や古美術の再生や収集、展示、普及へと活動領域を広げ、構想から完成まで20年の歳月をかけた「小田原文化財団 江之浦測侯所」が神奈川県小田原市に10月9日開館した。

 

その他、文化功労者には、デザイン・文化振興の鈴木順子氏(通用名コシノ ジュンコ氏)、元ウエイトリフティング・オリンピック金メダリストの三宅義信氏らに決まり、顕彰者総数は854人(現存者235人)となった。文化功労者顕彰式は11月6日ホテルオークラ東京で行われる。

 


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