よく「海は好きですか」と聞かれる。
これまで描いた作品の半数以上が海をモチーフにしたものなので、当然の質問だ。
ただ改めて問われると海は嫌いではないが好きだという感覚もない。なぜなら泳ぐのは得意でないし海辺のバーベキューもここ数年行っていない。日焼けするのも嫌いなので海には基本入らない。
生まれ育った家は海水浴場まで車で3分の海沿いの地域だ。大人になってからは朝早く起きて天気が良い日は目覚ましがてら海辺へドライブに行き、朝日を観るのが日課になっている。大学で下宿生活をしていた時もマンションの目の前にはウチノ海という島に囲まれた海が見え、車を少し走らせれば鳴門の渦潮を堪能できた。私にとって、海は特別な娯楽地ではなく当たり前の景色であり日常だ。
海の絵を描いたのも最も身近なモチーフだったことが理由の一つだ。画家としては致命的な事かもしれないが、私は想像するのがとても苦手で、眼で見たものを感じたままに描くことを基本にしている。それでも海の絵を描くと毎回違う空気感の作品が完成する。無意識に日々の生活の喜怒哀楽が、日常の一部になっている海に反映しているのかもしれない。
光をテーマとして制作をしているが、空や山を描く時も基本は海の輝きの描き方を生かすようにしている。
今年の夏は個展やグループ展が続き予定に追われて海へ行く事が少なかった。最近は朝夕が涼しくなってきたし、今度温かいコーヒーを飲みながらゆっくり波音を感じに行こうと思う。
青木 成実 (あおき・なるみ)
1986年徳島県生まれ。鳴門教育大学大学院修了、現在国画会準会員。精緻な写実描写による伸びやかな空と海、きらめく光の風景画で人気を博する気鋭の女流作家。また、モデルとしても精力的に活動する。2018年10月10日(水)~22日(月)永井画廊「公募―日本の絵画―受賞者セレクション」出品予定。10日(水)17時より各作家によるトークショーに出演予定。