私は文星芸術大学の大学院博士課程で《練り込みOGテンペラ》というテンペラ絵具の処方を開発し、その研究で博士号を取得しました。
《練り込みOGテンペラ》とは、練り込みテンペラと、OGテンペラを新たな発想で混ぜ合わせ生み出した、新しい処方のテンペラ・メディウムです。西洋で発祥したテンペラ・メディウムは、あらゆる作家達により、自身の表現の為に部分的なマイナーチェンジを繰り返し、その性能や使い方を変えながら現代に引き継がれてきました。
テンペラ・メディウムは、ほんの少し配合されている油分やニスなどの内容物が変わっただけで、その効果の違いは大きく画面に現れてきます。《練り込みOGテンペラ》の特長は厚塗りが可能な上に、細密な表現も可能な汎用性に富んだテンペラであることです。二つを混ぜることにより、練り込みテンペラ、OGテンペラ単体ではできなかったことを可能にしました。
また、水溶性でありながら、油絵具のような使い方もでき、油絵具との馴染みも良く混合技法にも充分に対応できる柔軟性を持ったテンペラでもあります。
技法や処方は人が人に直接伝える事でより研究が深まり、進化を果たしてゆく魅力も秘めています。私の展望としては、ゆくゆくは大学機関にて若い学生や新たな世代の作家にこの処方や技法を伝え、そこから更に新たなテンペラ絵具の処方が開発され日本の絵画の発展の一役を担う事になれば幸いだと考えております。
1983年栃木県生まれ。2015年文星芸術大学大学院芸術研究科美術専攻博士課程後期油画修了(博士号取得)。博士論文は「現代に於ける写実表現の研究~写実表現に有用なテンペラ・メディウムの技法研究と開発~」。13年第1回・16年第2回ホキ美術館大賞展入選、14年第5回牛久ビエンナーレ入選、16年美術新人賞デビュー入選。毎週月曜日、栃木・ギャラリー懐風にて絵画教室を開催中。
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