[通信アジア] ICOM 2019 京都大会 二条城、大宰府、御船山:南條史生

2019年10月15日 18:00 カテゴリ:コラム

 

ICOM京都大会メイン会場の様子。

ICOM京都大会メイン会場の様子。

 

ICOMの3年に一度の大会が9月1日から7日まで国立京都国際会館で開催された。

 

今回日本が掲げた会議のテーマは「Museums as Cultural Hubs: The Future of Tradition(文化をつなぐミュージアム―伝統を未来へ―)」である。そしてキーワードとして「Museums as Cultural Hubs(文化をつなぐミュージアム)」を掲げている。そして全体の構成は3人(隈研吾、セバスチャン・サルガド、蔡國強)の著名な知識人による基調講演、4つのプレナリー・セッション(全体会合)、さらにパネル・ディスカッション等があり各開催日の午後は各種分科会が同時進行した。

 

「持続可能な未来の共創」や「デコロナイゼーションと返還」「博物館定義の再考」などのテーマが掲げられて、一部アジアでの開催らしい内容ともなった。

 

今日、博物館・美術館は大きな変化の前に立たされている。それは一方に大きなテーマ「持続可能性」があり、他方で資金確保の問題、収蔵品の種類の多様化、収蔵品の肥大化、教育的使命とコミュニティーへの責任など、単独では解決できない多様な役割を要求されて、戸惑っているとも言えるからだ。会議で解決がつく訳ではないが、互いのケースを知り、理念を再構築することによって、未来へ向かう事が出来るのかもしれない。

 

さて、私は京都市と一般財団法人 カルチャー・ヴィジョン・ジャパンの依頼で、名和晃平氏とアドヴァイザーという肩書きで、3日の二条城におけるレセプションに合わせて日本の現代美術展を開催した。二条城はユネスコの世界遺産(世界文化遺産)なので、展示に多くの制約があり、それに合わせて出品作も多くが畳の上に置くだけで展示できる、単体で独立し、また視覚的なプレゼンスも控えめな作品とした。その結果、日本の古典木造建築の空間とミニマルな日本テイストの絶妙な対話が生み出せたのではないかと思う。

 

この展覧会はたった数日の展示だったが、文科大臣、文化庁長官、京都市長、京都府知事、それに3800人のICOM関係者が訪問した珍しい展覧会となった。同時期に原田マハ氏も清水寺で、現代美術展を開催して好評を博した。

 

大宰府の境内に設置されているピエール・ユイグの作品。

大宰府の境内に設置されているピエール・ユイグの作品。

 

その後、私は大宰府の現代美術コレクションを見に、愛好家20人とともに北九州エリアを訪問した。大宰府天満宮は全国天満宮の総本山だが、そこに欧米の作家を含む重要な現代美術が展開している。ピエール・ユイグ、ライアン・ガンダー、サイモン・フジワラなどの作品が境内に点在している。特にピエール・ユイグのブロンズの裸体彫刻の頭部に蜂の巣が築かれている作品は、周囲を蜂が飛び回っていて庭師が観客に注意を喚起している。すでにカッセルのドクメンタや岡山芸術交流で見た人も少なくないだろうが、何度見ても不可解である。

 

その後、佐賀県武雄市の御船山へ向かった。そこには竹林亭という高級旅館の裏山にチームラボの壮大な展示が行われている。今年で5年目になるというこの催しは、知名度も上がり、毎夏大勢の観客を引きつけている。お台場のチームラボ ボーダレス展とは異なり、自然をキャンバスにこれだけ大規模なメディアアートを展示して、一般の人が参加出来る環境を作ったという意味で、前人未踏の領域に到達していると感じざるを得なかった。(森美術館館長)
 
 

二条城における「時を超える:美の基準」展の向山喜章の作品。

二条城における「時を超える:美の基準」展の向山喜章の作品。

 


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