画家が絵を描き始めてから完成させるまでには様々な心の葛藤があります。
特に作品のインスピレーションを維持しながら過ごすには根気が必要です。
100号以上の作品になりますと、取材や構想も含めて2ヶ月から3ヶ月を費やす為、精神面や体力面の消耗があるのと同時に、新鮮味も徐々に薄れていきます。
自身との対話を行いながら、毎日の気持ちの調整は欠かさず行わなければなりません。
インスピレーションを得るために、普段は諸外国の出来事に注目し情報収集しています。さらに現場へ行き、その場の空気感や熱気を実感することを大切にしています。しかしコロナ禍で海外へ渡航できない今、国内の動向に注視する事が多くなりました。
コロナ禍の混沌とした状況が続き、右往左往している日本社会。
必然と、疫病の早期収束を願う作品を考察し始めました。そんな中、赤坂にある日枝神社を参拝する機会があり、猿が祀られている姿を目にしました。
猿は古来より神の使いであるとされています。神様と人間の間を取り持つ存在として全国の神社仏閣に祀られ、「災いが去る(サル)」「困難が去る(サル)」として縁起物や魔除けの象徴とされてきました。猿を主役として、觔斗雲に見立てたマスクに乗って飛ぶ構図がふと頭に浮かびました。
現在発表へ向け黙々と制作中ですが、災難に打ち勝ち、希望の光を見つめ、前途洋洋の心持ちに少しでも向かえる作品になれば幸いです。前記で述べた作品は、10月29日から開催の日展に出品予定です。
谷川 将樹(たにかわ・まさき)
1984年鳥取県鳥取市生まれ、武蔵野美術大学大学院 造形研究科修士課程修了。改組 新 日展 特選受賞、第9回菅楯彦大賞展入選など受賞・作品発表多数。現在日展準会員、新日春展会員。
「第8回日展」10月29日(金)〜11月21日(日)国立新美術館
「京都アートフェスティバル」 11月3日(水)〜8日(月)大丸京都店
「ART SG」 2022年1月20日(木)〜23日(日)シンガポール など出品予定。
【関連リンク】谷川将樹オフィシャル・ウェブサイト