私の生活空間と絵を描く空間は、完全に分かれているわけでもなく、混在しているわけでもない。中間の雰囲気は、グラデーションしながら繋がっていく。
作品制作では、実際に画面の上で手を動かしている時間はそんなに長くはない。
短時間であっても、いかに心をひらいて絵に向き合うかが、自分にとっては重要となる。
心をひらくためには、アトリエの居心地が良いことや、制作空間にいたるまで目に入る全てのもの
が自分の好きなものである必要がある。
アトリエに向かうタイミングは様々。
息子を幼稚園に迎えに行く少し前だったり、料理の準備の合間や、洗濯物をたたんだ後だったりする。アトリエは3階にあり、生活スペースの2階から階段をあがっていく数秒間が、気持ちを切り替えていく場でありタイミングとなる。この空間でゆったりと自然に、グラデーションしていく様に、気持ちを絵に向き合う方向へと切り替えていく感覚を私としては大事にしている。
生活と制作をつないだ中間となるこの空間には、自分の好きな本や漫画、おもちゃの小物、色々な観葉植物などが置いてあるが、アトリエに近付くにつれて、絵を描くときのイメージに繋がるような美しい形のモチーフ、石膏像、画集などを徐々に増やして置いている。
一段一段階段をふみしめるごとに気持ちも雰囲気と共にグラデーションしていく。
そして、絵に向かう心がひらいていく。
吉住 裕美(よしずみ・ひろみ)
1982年埼玉県川口市生まれ、多摩美術大学卒業、現在白日会会員。居を構える川口市にて同じく白日会会員の宇田川格と「絵画教室アトリエ・らぱん」を主催。06年白日会展にて初出品・初入選・新人賞受賞を果たし、以後毎年出品。富田賞、損保ジャパン日本興亜美術財団賞など受賞を重ねる。公募美術展のみならず百貨店やギャラリーを中心に作品発表多数。1月19日㈬~25日㈫日本橋髙島屋S.C.本館にて「Primary colors 果醐季乃子 長谷川晶子 吉住裕美」開催予定。
(*吉住の「吉」の字は正式には土に口となります)
【関連リンク】絵画教室アトリエ・らぱん