大学院で平安仏画の模写研究を始めてから、自分の制作でも絹を使うようになった。
2010年頃から絹本の作品を中心に発表している。
学部生の頃、「日本画」に悩み、何を表現すべきかで悩み、悩んだ末の古典研究の道だった。
元々歴史や人文社会学が好きで、伝統的な絵画材料に興味を持って日本画専攻に入学したので、大学院で学ぶことは何もかも楽しかった。平安仏画の色彩の魅力、技術の高さに魅了され、絹本で描くことが自分の感性にも適っているように思えた。と同時に、古画の絹と現代絹では質感や織目の感じが違うことに何か引っかかるものがあった。
そこから絹本制作とともに絵絹の研究もスタートした。
養蚕や製糸、製織に関わる場所を訪ね歩き、他の日本画材料と同じように、絵絹も近代以降大きく変わったのだということを理解した。
日本の絹をめぐる状況は厳しい。
養蚕農家も製糸会社も絵絹製作会社も数えるほどになっていて、絵絹の自動織機は製造をとうに終えている。四半世紀〜半世紀ほど前に作られた織機をメンテナンスしながら絵絹は作られていた。
そう遠くない将来に絹本で描けなくなってしまうかもしれない。
新しく描くための絹がないということは、古い文化財を修理するための絹もないということだ。
文化財の現場では絹だけでなく、日々色々なものが姿を消しつつある。
何かできることはあるのか。
日々絹絵を描きながら思い巡らせている。
京都 絵美(みやこ・えみ)
2012年東京藝術大学大学院文化財保存学専攻保存修復日本画博士後期課程修了。2016年山種美術館Seed日本画アワード2016大賞受賞
6月1日〜7日京阪百貨店守口店、10月5日~15日大雅堂にて個展予定。
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