17歳の時、美術高校で油絵を専攻しました。
油絵の具のドロリとした筆感触(ざわり)と質感、鼻をつくオイルの匂いがたまらなく好きで、今でも油絵の具を触る度、当時の「これだ」という感覚が鮮明によみがえります。
油絵を描いていますが、日本画特有の「間」の表現や神経の行き届いた輪郭線への憧れが強く、日本人が持つ空間の捉え方を意識し制作しています。形から入るのも大切だと考え、梅皿などの様々な形の絵皿をパレットとして使い、面相筆や平筆などの日本画材も多く愛用しています。
また、幼い頃から物を集める癖がありました。工事現場の砂場に混ざった小さな貝殻、帰りの道端に落ちている虫の死骸やキラキラしたビーズやスパンコール。何処から来て何処へ行くのか、その物一つ一つが辿ってきた背景に想いを馳せると、それはとんでもない宝物だと感じるのです。大人になった今でも収集癖は治らず、何か面白いもの、美しいものは無いかと、時々下を見て歩いてしまいます。
そして私は油彩の表面にコレクトしたビーズや虫の羽などを貼りつけます。コラージュ効果を狙ってというよりは、大切な親友へ似合いのプレゼントをこっそり贈るように。
私の絵の中の生き物たちはありのままの姿で嘘もお世辞も言わない、いわば親友のような存在です。絵との親密な相談が進み、ナイフで削り、絵の具を溶かしたり重ねたりを繰り返すうちに、心の底から「共感し合えた!」という確信に近い感覚が訪れ、一枚の絵ができあがるのです。
川野 美華(かわの・みか)
1983年大分県生まれ。2008年別府大学文学部芸術文化学科研究生修了、18-19年ウィーン美術アカデミー具象絵画部聴講。現在、春陽会会員。
これまで東京・九州で個展多数開催。春陽展では春陽会賞、損保ジャパン美術財団賞を受賞。
摩訶不思議な生き物たちによる唯一無二の世界観で広く注目を集める。
4月19日(水)~5月1日(月)国立新美術館「第100回記念春陽展」出品。
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