明日少女隊は、オンラインのコレクティブで、2015年から活動を始めている。
自称「第4世代若手フェミニスト 社会派アートグループ」で、アート+フェミニズム+アクティビズムを標榜し、「男性、女性、いろいろな性。みんなが平等でHappyな社会を」目指して行動している。
リーダー格の尾崎翠がNYの美術学生だった時から知っていて、明日少女隊も設立の当初から見守ってきた。
来年で10周年になるが、刑法性犯罪改正、広辞苑のフェミニズムの定義、「慰安婦」やトランスジェンダーの権利の問題など様々なテーマに取り組み、メディアへの意見書送付をはじめ、パロディー精神あふれるポスター類の制作、ワークショップの開催をつなげながら、街頭などの公共空間でもパフォーマンスをするなど幅広い展開を遂げている。
昨年は東京で個展を開催し、作品集を兼ねたフェミニズムの入門書を出版した。また、18年にはシドニーで個展を行い、先日ニュージャージー市大学アート・ギャラリーでアメリカ東海岸初の個展をオープンするなど(会期12月18日まで)、英語圏での認知度も高まり始めている。
隊員は日本やアメリカを中心として南米やヨーロッパ、アジアまで50名を超える。アートグループとはいうものの、アーティストの会員は少数派で、アートは戦略のためのツールとして有効利用している。
何より、数人のグラフィック・デザイナーを擁していて、明日少女隊の日本語のロゴや、作品集のタイトル『We Can Do It!』のタイポグラフィー、広報や啓蒙のための各種シールには洗練されたデザイン感覚が光っている。また、蚕と兎をハイブリッドしたショッキング・ピンクのマスクも、きもかわいい。
ところで、明日少女隊のように社会テーマに介入していくアートは、どんな実効があるのかということがしばしば議論される。アートによって問題意識を高めることが第一義だとも言えるが、明日少女隊の場合には、小さいながらも変革を引き起こしたプロジェクトもある。
それは、広辞苑第6版の「フェミニスト」と「フェミニズム」の定義に異議を申し立て、改訂を求めた《広辞苑キャンペーン》である。広辞苑と言えば、国語辞書の定番として確たる位置を長年維持しているが、フェミニズムの定義が「女権拡張論」、またフェミニストを「女権拡張論者」とするのみならず、「俗に女に甘い男」という時代遅れの定義まで掲載されている。
これに対して、日本の広辞苑に対応するアメリカのウエブスターやイギリスのオックスフォードが「性別間の政治的、経済的、社会的平等の理論」として、「平等」の文言を入れていることに着目、「フェミニズムが『性別間の平等』を求める思想であることを明記」してほしいという署名運動を開始、6500筆以上の署名を集めて、第7版に改訂の際に「平等」の二文字を追加させることに成功した。ただし「女に甘い男」が第二義として残ってしまったことは今後の課題となる。
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