[ときの人] 松村克弥さん 復興支援映画『天心』監督

2013年03月29日 19:38 カテゴリ:コラム

 

撮影:川島保彦

岡倉天心の歩み、震災からの復興重ね

 

 

東京美術学校校長をつとめ、日本美術院(院展)の創設へ努力した思想家・岡倉天心。その生涯を、茨城の五浦時代を中心に映画化した。

 

美術商の知人に天心を教えられ、興味をもったのがはじまり。脚本を書き、支援者も集い始めた矢先の2011年、東日本大震災は起きる。主な撮影予定地の六角堂が津波により流失。天心を描くのに欠くことのできない「象徴」が突如消え、「目の前が真っ暗になった」。けれど、北茨城市、茨城大学を中心に再建支援の輪が広がり、翌12年にはかつての姿を取り戻す。撮影も昨年末には終了したが予算に苦闘し、今も仕上げの資金を集めている。

 

天心(竹中直人)と横山大観(中村獅童)が物語の中軸。「聖人君子にはしたくなかった」という天心は、ときに矛盾もかかえ弟子たちとぶつかる。断崖絶壁に建つ日本美術院研究所も実寸大で再現された。「天心は弟子たちに言います。自分を信じろと。それは不遇な時代であっても、自分の信じた道を歩み続けろという意味です」。経営難や「朦朧体」への無理解に立ち向かった天心たちの気概は、復興を目指すすべての人を鼓舞することだろう。

 

92年、若者の激しい焦燥感を描いた『オールナイトロング』で監督デビュー。多彩なジャンルを手がけ、「映画は緊迫感」と語る。写真は天心旧宅の跡地、岡倉天心記念公園。その人の命日、9月2日の特別試写会(東京藝術大学)を目指し製作は進む。49歳。

 

【関連リンク】 復興支援映画『天心』公式サイト

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「新美術新聞」2013年3月11日号(第1306号)4面より

 


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