[フェイス21世紀] : 三宅一樹さん

2013年05月14日 17:06 カテゴリ:コラム

木のいのちと語り かたちに美を宿す

 

アトリエ「榧乃舎」にて(2013年4月16日撮影)

 

 

木との対話―それは彫刻家・三宅一樹の制作における第一の仕事であり、不可欠な“儀式”だ。アトリエ「榧乃舎(かやのしゃ)」の貯木場には榧や檜の材木が横たわり、時が経ち乾燥した樹皮ははがれ、毛羽立つ繊維体や木部の表情をのぞかせている。「こうして寝かせておき、眺め、触れて、この木が生きた時間に思いを馳せる。ノミを入れるまで大抵数年を要します」と三宅は笑う。「はるか数百年を生き抜いた木を彫らせてもらうのだから、今後数百年、数千年も生きられるような作品にしないと申し訳ない。だから時間をかけて木と対峙し、対話を重ねながら第2の生命としてのかたちを探っていく。非効率的かもしれませんが、私にとって何よりも大事な仕事です」。

 

 

「YOGA-犬の神殿」 2012年
64.0×87.0×40.0cm

現代美術のマーケットを主な発表の場とするが、一方で多摩美術大学在学中の94年に初出品して以来およそ20年にわたって二科展に出品を続けている。「二科では本当に多くの事を学んでいます。国内各地の彫刻家たちが、年に一度この時のために作品を制作し、会場では新人もベテランも一作家として意見を交わす。このような場は貴重です。全ては自分の作品をより良くするため。良いバランスをとりながら様々なものを吸収していきたい」と話す。

 

 

妥協を許さぬ卓抜した造形力もさることながら、「氣」をテーマとした「Yoga」シリーズや、木に宿る精霊や神の姿をまさに顕在化させた近年の「神像彫刻」シリーズなど、神道に代表されるアニミズムの思考に馴染み深いわれわれ日本人にとって、三宅の作品は非常に受け入れやすいものだろう。事実、若手作家の中でもその作品は非常に高い人気を誇る。「古今東西、傑作と呼ばれる作品は、多くの人に愛され守られてきたからこそ長い年月を生き、今に残っています。そのように“伝えていきたい”と思ってもらえる作品を創りたい」。

時代を超える普遍的な美を宿す。理想のかたちを目指し、彫刻家・三宅一樹は木々の声に耳を傾け続ける。

(取材/和田圭介)

 

 

三宅一樹(みやけ・いっき)さんプロフィール:

1973年東京都生まれ。96年多摩美術大学美術学部彫刻科卒業。98年同大学院美術研究科彫刻専攻修了。09年同大学院美術研究科博士後期課程修了、博士号(芸術)取得。94年第79回二科展に初出品で特選を受賞、以降も受賞を重ねる。現在、多摩美術大学非常勤講師。02・03年個展「素脚詞」(みゆき画廊・東京)。06年個展「Yoga」(ギャラリーせいほう・東京)。10年個展「氣」、「神像彫刻」(YOKOI FINE ART・東京)など。今後は、2014年3月にギャラリーせいほうで個展を予定。

 

 

 

新美術新聞2013年5月1・11日合併号(第1311号)5面より

 

 

 


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