[フェイス21世紀] : 山本大貴さん

2013年08月12日 18:43 カテゴリ:コラム

 

新世代の写実 時代のリアリティを描く

 

千代田区神田にて(2013年6月14日撮影)

野田弘志や中山忠彦たちから生島浩や五味文彦、島村信之らが受け継いだ写実絵画のイズムを新たに継承する世代として、80年代生まれを中心とする写実作家たちが今、若くして美術界の注目を集めている。

 

山本大貴は1982年生まれ。ゲームやマンガ、アニメの発展とともに育ち、人付き合いにセンシティブな一面を持つ、まさに“現代の若者”だ。望遠レンズ越しに対象を捉えたような近年の作品は、その卓抜した手仕事の妙もさることながら、現代の若者のコミュニケーションのあり方を象徴するかのような絶妙な距離感が魅力を放つ。

 

 

 

「僕らの世代にとっては、美術のオールドマスターよりもゲームやマンガの方が身近で、絵を描き出したのもその影響が大きかった」と話す。「将来も漠然と絵を描いていきたいとの思いはありましたが、初めから画家になるつもりは無く、いわゆる就職組として一度はゲーム業界に就職しました」。しかし、在学中に出品した白日展で白日賞、卒業制作で優秀賞を受賞した有望な若者を美術業界が放っておくわけもない。数多くの画商から声をかけられ、結果、山本は画家の道へと歩を進めることとなる。「実力とは別にタイミングもあった。僕が大学を出る頃は、ちょうど業界が若い作家を求めていた時期だったのだと思います。1、2年違っていたらどうなっていたか分かりません」。

 

(左)「Prologue」 2013年 41.0×53.0cm パネル、油彩  (右)「Light Music !」 2012年 91.0×116.7cm パネル、アクリル、油彩

 

 

現在は白日会を中心に個展やグループ展で多忙を極め、アートフェア東京2012における個展では、初日で作品が完売するなど若手の中でも目立った人気ぶりを発揮する。「まず求められたものに対して結果を出してみせる。今はそれが一番大事だと考えています。絵を描くことで僕は社会とつながり、作品を通じてコミュニケーションをとることが出来る。だから手を動かし続けるんです」。単なる若手ブームと評する声もあるが、そんな声はおのずと消えゆくだろう。山本が結果を出し続ける限り。

(取材/和田圭介)

 

 

山本大貴(Hiroki Yamamoto)さんプロフィール:

1982年千葉県生まれ。2007年武蔵野美術大学卒業、09年同大学大学院修了。ゲーム業界大手のスクエア・エニックスに入社するも画家の道へ進み、写実絵画の新世代として注目を集める。07年、第83回白日展に初出品で白日賞受賞。10年、第86回白日展で富田賞受賞。現在、白日会会員。同じく白日会会員の丸山勉がキュレーションを行う「リアリズム・コンプレックス」メンバー。今後の主な予定は、8月21日~27日「明日の白日会展」(日本橋髙島屋)/「LIONCEAUX PLUS Vol.3(日本橋三越本店)、10月2日~18日個展(青山・新生堂)など。

新美術新聞2013年7月1日号(第1316号)5面より

 


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