[ときの人] 小林忠さん 岡田美術館館長

2013年10月18日 19:15 カテゴリ:コラム

 

 

撮影:川島保彦

撮影:川島保彦

極上の美術品、至福の時を箱根から

 

 

箱根に開館した岡田美術館の初代館長となった。同館は実業家・岡田和生氏があつめた日本・中国・韓国の美術品を中心に保存・公開する。就任打診の際、席に用意されたのはコレクションのアルバム。なかを見て驚いた。作品の多くが自分の美意識と近く、過去に解説を手がけたものもあった。「私の仕事に注目してくれていた」と感謝し、「罠ですよね」と茶目っ気たっぷりに笑う。

 

日本美術ファンで、知らぬ者はいない美術史家。千葉市美術館館長時代には酒井抱一や伊藤若冲、浦上玉堂などの企画展が話題を呼び、学習院大学では30年近く後進指導にあたった。日本・東洋の美術史研究誌『國華』主幹という硬派な肩書からは想像できぬほど、その語り口はユーモアたっぷり。ファンが多いのも納得である。

 

東京国立博物館にはじまり国立・公立館での勤務を経験。「私立美術館もおもしろい」と新たな環境で、この10月の開館にのぞんだ。茶室の露地を例にとり、美術館が箱根にある利点のひとつに、アクセスをあげる。「日常から離れ、やわらかくほぐれた心で極上の美術品を見ていただけます」。

 

その手腕は、愛情をもって「丸投げの名人」と称される。人の長所を見抜き、力を引き出す。72歳、前向きに、もう一仕事である。

 

「新美術新聞」2013年10月21日号(第1326号)1面より

 

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