美術商の伝統を守り、つなぐ
6月27日、淺木正勝前社長(現会長)からの後任指名を受けて、株式会社東京美術倶楽部第十二代社長に就任した。140年の歴史を持つ老舗 三溪洞の当代。祖父、父も務めた要職に「先人の努力を無にしてはならない。責任は大きい」と語る。
東京美術倶楽部は明治40年の設立から100年、美術商が入札会や交換会、美術展を行う場として、日本の美術界を支え続けてきた。現在、同社を主に利用する東京美術商協同組合には、画商や古美術商、茶道具商、刀剣商など約500名が加盟する。「専門分野によって業者それぞれのニーズは異なるので、それらを上手く汲み取り、彼らが仕事をするのにより相応しい場を作っていく努力が必要です」。
三溪洞では、笠井誠一、絹谷幸二、小杉小二郎、中島千波ら第一線で活躍する作家や画壇を率いた物故作家らを扱い、常に顧客との信頼関係を大切に、この20年間経営を担ってきた。老舗の伝統に裏打ちされた確かな見識と組織を動かす手腕。それが今、まさに求められている。「江戸時代にルーツを持つような美術商が中心となって組織し、信用を重んじて活動してきたのが美術商協同組合や美術倶楽部。我々はいわば、日本の美術界における保守本流なんです。時代の変化に合わせて変えるべきものは変える。しかし、守らねばならない伝統もある」。68歳。歴史を背負うその言葉は重い。
「新美術新聞」2013年9月21日号(第1323号)1面より
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