身近なものに心を寄せて
日動画廊が主催する第49回昭和会展で優秀賞を受賞。これが「人生初の受賞」だったという。これまでいくつものコンクールに出品するも選外の連続だった。
「今までも当然賞を獲るつもりで描いてきましたが、いざ自分が受賞となってみると未だに実感が湧かないですね。受賞の連絡が来たとき嬉しかったのは勿論ですが、どうしたらいいのか分からなくなってしまいました」と笑顔を見せた。
日本大学芸術学部美術科を卒業後、大学院へと進学、1年間のブランクを経て現在は同学科絵画コース絵画専攻の助手として勤務する。「大学院修了後は別の仕事をしようかと考えていた時期もあった」というが、同学部准教授・福島唯史氏の勧めもあり母校へと戻った。
教わる側から教える側へとなった今だが「学生たちには考えるきっかけを与える程度の指導しかしません。絵具の硬さなどは口で言っても分かるものではありませんし、感覚的な部分が大きいので、それを大事にしてほしい」そう語る設楽自身の作品で特徴的なのは日常的なモチーフに重ねられた力強い色彩だ。「なるべく無理に色を使うようにしています。普段意識していない色を使うことで発見も多い」。
またモチーフ選びは全て自分の身近にある物から行う。その方が形への理解も高まるし、何より物との心理的な距離感が近いのだという。今回昭和会展に出した作品は自転車がモチーフとなっており、「これも色が良くて絵になるなと思って買ったんですよ」。
今後3月から4月にかけて個展、グループ展、そして学内での助手展と発表の場が次々に控える。「多様な作家が集まり刺激を受けられる環境に出品したい。大学も受験者数が減っているので、自分の受賞で刺激を受けてくれる学生が増えるといいですね」。この勢いはこれからますます加速しそうだ。
(橋爪勇介)
設楽俊(Suguru Shitara)さんプロフィール:
1985年埼玉県生まれ。2007年日本大学芸術学部美術学科絵画コース卒業、09年同大大学院芸術学研究科造形芸術学科修了。10年より母校の絵画コースにて助手を務める。学部1年のときに川口市立アートギャラリーアトリアで初個展を開催。また東京・京橋のアートスペース羅針盤の「羅針盤セレクション」や練馬区立美術館と日本大学芸術学部による展覧会「N+N」などグループ展にも参加し積極的な発表を行う。今後の展覧会予定は次の通り。「設楽俊絵画展」3月18日(火)~23日(日)(東京・世田谷 成城さくらさくギャラリー)、「助手展(仮)」3月20日(木)~29(土)・「美術学科助手展(仮)」4月2日(水)~26日(土)(東京・練馬 日本大学芸術学部) 、「大山智子・設楽俊2人展(仮)」 4月7日(月)~12日(土)(東京・銀座 みゆき画廊)、「太陽展」5月22日(木)~6月3日(火)(東京・銀座 日動画廊)
「新美術新聞」2014年3月1日号(第1336号)9面より
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