〈画廊の本音〉 LIXILギャラリー

2012年08月03日 18:46 カテゴリ:コラム

 

中央アジア/トルクメニスタンの「アシク」または「ゴジャ」と呼ばれる背飾り 撮影:熊谷順                    「聖なる銀 アジアの装身具展」6月7日(木)~8月25日(土) 東京・ギャラリー1

ものづくりの風土-文化の多様性とともに

 

企業の手がけるギャラリーは、文化活動としてノンプロフィット(非営利)が一般である。作家は「売る」という意識を外し、制作と向きあうことができる。コマーシャルギャラリーとも、貸画廊とも異なるスペースだ。

 

この3月にINAXギャラリーから名称を変更したLIXIL(リクシル)ギャラリーもそのひとつ。1981年に東京・銀座で始まり、現在は大阪のギャラリーと愛知県常滑市にINAXライブミュージアムがある。

 

はじめの15年、美術評論家の故・中原佑介が顧問をつとめた。当時をたどれば、河口龍夫、新宮晋、吉村益信らの名が散見される。91年には第1回メセナ大賞・特別賞を受賞。30年をこす歴史を重ねてきたが、毎日のように展覧会を見て歩く、この姿勢は変わらないとディレクターの大橋恵美さんは話す。「ファイルも拝見しますが、これからやりたいことと異なる場合もある。まずはお会いします」。出来る限り卒展を巡るのが長年の伝統。「原則として、ひとりの作家に個展は一回。だからこそ、しっかりと向きあってその後も応援したい」。

 

東京には、大阪との巡回展を開くスペースと、現代美術、やきもののガレリアセラミカの3スペースがある。巡回企画展は企業の個性を生かした硬派でユニークな内容。個展は多彩な表現を取り上げ、野心的な造形やインスタレーションも多い。「作家も実験的な展示プランを出すことが多い」と大橋さん。どきりとする刺激的な内容もときにある。それが可能となるのは「ものづくりのメーカーでもあり、文化の多様性を重んじるところが大きい」のだとも。ふところは深い。

 

藤井秀全「Staining #3」 2011年 発光ダイオード、アクリル板、ミクストメディア                                                「藤井秀全展」7月2日(月)~26日(木) 東京・ギャラリー2

インタビューを大切にするのも文化活動の記録として残すのと同時に、作家には「あとで、その人の財産になるのではないか」という願いが込められている。

 

ウェブでのアーカイヴを紐解けば、画廊史にはとどまらない現代美術の息吹と、営利から離れたところでこそ芽吹く「ものづくり」の風土を感じることができる。スタート当時の「一番いい場所に文化の場を」との精神が今に伝わる。

(取材/袴田智彦)

 

LIXILギャラリー(東京都中央区京橋3-6-18)

☎03-5250-6530

【開廊時間】 10:00~18:00

【関連リンク】 LIXILギャラリー

「新美術新聞」2012年6月21日号(第1283号)5面より

 

 


関連記事

その他の記事