[画材考] 大庭英治 : 混色の魅力 ― それを支えるパレット

2014年07月30日 09:55 カテゴリ:コラム

 

 

油絵を描く材料は、絵の具、筆、解油(ときゆ)、ナイフ、パレット、キャンバス、そしてイーゼルといったところでしょうか。私の場合、これらの中で一番重要なのがパレットなのです。何故かというと、私は絵の具をナイフで混ぜ合わせて別の「色」を作り上げ、それをキャンバスに塗り着けることが多いからです。例えば藤色を作るのに赤と青、そして白を混ぜますが、まったく斑のない「色」になるまで、ナイフで煉るように混ぜ合わせつづけます。ですから、どうしても安定した状態のパレットが必要になるのです。パレットは手に持って使う木製ものではなく、大理石を磨きあげた平板を使っています。自宅のアトリエで使っているものは60cm四方で、大学の研究室にあるのは、キャビネットと同じ大きさに切ってもらったもので、幅107cm、奥行き42cm、厚さが2cmあります。とにかく、微妙な色合いを重ねるのが私の絵の重要なポイントのひとつになっているので、丹念に煉るように混ぜてゆく作業には必要不可欠な道具です。

 

以前、テレビの番組で、ある歌手の顔の色を混色で作り上げるという企画が私のところに来たことがありました。私は絵の具を混ぜ合わせて物の固有色を作り上げるのがわりと得意だったので、日焼けした歌手の顔の「色」作りに挑戦してみたいと思いました。ですが、残念ながら番組の収録の日程が折り合わずこの番組への出演は叶いませんでした。

 

ともかく、私にとって混色作業が重要なので、一番大切な画材はパレットということになります。もちろん使い終わった後は奇麗に拭き取り、いつも大理石のテーブルのようにしています。

 

大庭英治 (おおば・えいじ)

洋画家、立軌会同人、日本大学芸術学部教授。今後の発表予定に「稜の会」(9月3日~9日の大阪展より、東京、名古屋の髙島屋各店を巡回)など。

 

「新美術新聞」2014年8月1・11日号(第1351号)5面より

 

 


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