[通信アジア] イコム年次大会に参加して:青木保

2014年08月27日 16:30 カテゴリ:コラム

 

6月のはじめ数日、パリのユネスコ本部を会場としてICOM(国際博物館美術館協議会)の年次大会が開催され、出席した。昨年はブラジルのリオで3年に一度開かれるICOM総会にも出席した。パリでの年次大会は各国のICOM(イコム)委員長と幹部が参加する会議で毎年開かれる。過去1年の業績報告が中心でそれらの報告に関して議論して了承することが目的であるが、何しろ100カ国を超える参加国全体の意見が反映されるとあって、朝から長時間の会議が続いた。

 

総会は3年ごとに開かれるが、次回は2016年にミラノでの開催が決まっている。その次、2019年の総会はどこで開かれるか決まっておらず、イコム日本では開催場所を京都に決めて京都府と市、それに京都国立博物館などの関係者の了承も得て動き出した。秋までに正式の参加表明を行って、大量の応募書類を来年早々に提出しなければならない。最終的には書類選考の結果、3カ国が選ばれ、来年6月の年次大会で各国がプレゼンテーションをして大会参加国(代表)全員の投票によって決まる。ちょっとしたオリンピック・パラリンピック開催国決定のような感じになる。日本・京都もよほど魅力ある説得力に満ちたプレゼンをしなくてはならない。

 

前回のミラノ決定ついて争ったのはモスクワとアブダビであった。来年、京都が選考対象になったとして、どこと競合するのか。これは大きな問題だが、いまのところ、中東湾岸の首長国の一つ、カタールが名乗りを上げているほか、アメリカも手を挙げるそうで、前回のモスクワやアブダビはどうするのか、いずれも強敵に違いない。

 

京都は最近世界で最も魅力ある都市として観光関係の国際雑誌に選ばれたと報道されたが、イコム総会にこれほどふさわしい都市もないと思う。東京オリンピック・パラリンピックの前年に京都で文化の基盤とも言うべき博物館美術館の国際会議(リオでは110カ国、約2千人が集まった)を開催するのには十分な意義がある。それを機会にあらためて博物館美術館の重要性を社会や国家に訴え、また日本の博物館美術館の素晴らしさを世界に示す貴重な機会となる。

 

とはいえ、そこに至る道は険しく、イコム日本関係者もよほどの覚悟をしなければならない。大体、イコムの存在自体国内では関係者以外ほとんど知られていない。私は昨年6月からイコム日本に参加しているが、イコム・カードの有効性(世界の主要博物館美術館ではこのカードを見せれば入れてもらえるし、混雑していても別口から入れてくれる)の恩恵は蒙っていたものの、その活動についてはよく知らなかった。

 

イコム総会はすでにソウルと上海で開催されている。開催地の発言力は強く、韓国も中国もイコム本部の幹部に名を連ねている。日本人の名前はない。両国では開催後、博物館美術館への関心が高まり、いくつか新しい博物館美術館が建設されている。近代における博物館美術館のアジアにおける先進国には違いない日本の遅れはこの面でも目立っている。2019年は日本の博物館美術館にとって大きな意味を持つ。本紙の読者の皆様にもぜひ支援をお願いしたい。

(国立新美術館館長)

「新美術新聞」2014年7月21日号(第1350号)3面より

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