芸術の秋、アート作品のみならず、欲張って「自然の絵の具」がまき散らされた情景も眺めたい。紅葉前線を追って美術館を巡り、眼福にあずかろう。
札幌国際芸術祭も閉幕し、札幌芸術の森(北海道)は今まさに紅葉シーズン真っ盛り。今週末頃までが見ごろだろう。広大な森には、野外美術館や制作体験が楽しめるアトリエなどが点在。この場所の気候や地形に合わせて制作された彫刻作品は、表情も豊かだ。
昨年9月に移転開館した秋田県立美術館。千秋公園近くにあり、ラウンジの庭越しに見る千秋公園の景色はまるで大壁画のよう。ソファーでくつろぎ、コーヒーとともに真っ赤なモミジや楓を味わいたい。例年の見ごろは11月上旬だ。
晩年を過ごした御岳の自然を愛した日本画の巨匠・川合玉堂。御岳渓谷沿いに建つ玉堂美術館(東京都)は吉田五十八が設計した数寄屋建築で、奥多摩の自然と溶け合っている。館前の大イチョウの黄と周りのモミジの赤との競演が見られるのは、例年11月中旬以降。夜間のライトアップも見逃せない。
紅葉の名所・箱根の中でも、箱根美術館(神奈川県)のモミジは特に名高い。11月、敷地内の日本庭園に植えられた200本以上のモミジが一斉に色づくさまは圧巻。苔庭に面した茶室で一服しながら観賞するのもおすすめだ。
北アルプスを望む安曇野ちひろ公園、脇を小川が流れる。清々しい山岳風景に調和して建つ安曇野ちひろ美術館(長野県)は、内藤廣が設計。ここで一日を過ごし、命の洗濯をする人も多い。美術館を囲む木々が色づき始めるのは10月中旬頃。公園だけでなく館内やカフェのテラス席からもその情景を楽しむことができる。
信楽町の自然豊かな山に抱かれたMIHO MUSEUM(滋賀県)。レセプション棟から本館まで電気自動車でも移動できるが、ゆっくり紅葉を愛でながら、トンネルや陸橋を渡ってこのアプローチを楽しみたい。見ごろは例年11月中旬。
木津・宇治・桂川の三川を望む天王山の中腹に建つアサヒビール大山崎山荘美術館(京都府)は、登録有形文化財の「大山崎山荘」、安藤忠雄が設計した地中館と新館から成る。約5500坪もの敷地内にある庭園の紅葉は、例年12月上旬まで楽しめる。
日本庭園の美しさで海外でも名を馳せる足立美術館(島根県)。枯山水庭をはじめ、5万坪におよぶ6つの庭園、中でも「寿立庵」の楓は、例年11月中旬から12月上旬まで目を楽しませてくれる。
近代彫刻界の大家・平櫛田中の偉業を称える井原市立田中美術館(岡山県)の前に、南斗山を背景に広がる「田中苑」があり、田中作品のブロンズ像が配されている。中国の孔子廟に植樹されたことより学問の木と言われる櫂の木が3本あり、例年11月上旬頃赤く染まる。苑内にたたずむ田中の代表作「鏡獅子」もまた見事である。
石橋美術館(福岡県)は、四季折々の花が彩る大きな庭園の中にある。美術館そばのバラ園で薫り高き秋バラが盛りを過ぎる11月上旬頃、モミジ、イチョウ、ケヤキなど色づき始め、11月中旬以降見ごろを迎える。
(編集部)