46億年の師―地球とそこに生きる生命
画材…私は普段日本画を制作する上でごく一般的な道具を使っているので、ここでは“作品制作に必要なもの”として広域な意味で「自らの五感」と「経験」をあげさせていただきます。
作品は目に見えない思いを表現するために、目に見えるものの姿を借りてそれを伝えようとしています。それにはまず自分がその借りるモチーフ自体に感動し、五感に刺激を得なければ作品に説得力がないと思っています。更に何事も経験があってこそ第三者に伝えることができると思います。それゆえ私にはそれらを得るために実在するものや場所へ赴く取材は欠かせません。
現在私の作品テーマは、地球とそこに生きる生命の奇跡についてです。それをどう表すか、どうすれば見る人の心を動かすことができるかを常に考えて、できるだけ普段からも地球のエネルギーを実感できる山岳地などへ足を運び、また歴史の深い国々などを訪れてスケッチ取材をしています。
直接そこにある風景を作品として描くわけではありませんが、地球上の多くの自然現象は奇であり、意味があり、そして教えられることがたくさんあります。ですから現場での臨場感を体感し、そこで生まれた思いを溜めて、いよいよ自分のテーマと重ね合わせて本紙に一つの世界を再構築していきます。
このように小手先だけの技術や薄っぺらな理屈にならないよう、46億年の師に学びに行くことが私の重要な“画材”の一部になっていると言えます。
古澤洋子(ふるさわ・ようこ)
日本画家、日展会員、石川県美術文化協会理事。改組 新 第1回日展に「46億歳」を出品。
「新美術新聞」2014年12月1・11日号(第1362号)5面より